太郎山 (飛騨山脈)

太郎山（たろうやま）

太郎山は、富山県の南東部に位置する富山市にある山で、標高は2,373メートルを測ります。雄大な立山連峰を構成する一峰であり、飛騨山脈、通称北アルプスのほぼ中央部、その西端に近い位置を占めています。山域全体が中部山岳国立公園の特別保護地区に指定されており、貴重な自然環境が保たれています。

地理的特徴

この山の最も特徴的な地形の一つが、北面に広がる太郎兵衛平です。これは中生代の手取層群に由来する砂岩と礫岩が長い時間をかけて浸食されて形成された広大な平坦地で、草原や湿地に見られる池塘が点在する景観が広がっています。太郎山自体は、太郎兵衛平の南西、立山連峰の主稜線上にある比較的小さなピークです。南側には北ノ俣岳がそびえ、その北斜面には高山植物の群落が見られます。太郎山は、常願寺川水系と黒部川水系を分ける分水嶺に位置し、ハゲ谷、ヤクシ谷（真川の支流）、薬師沢（黒部川の支流）といった河川の源流となっています。近くには有峰ダムがあり、その南東約7.5キロメートルに位置します。山頂には三等三角点「太郎」が設置されています。

登山

立山連峰の主要な縦走路は、太郎山の山頂のすぐ東側を通過しており、山頂自体は縦走路から少し外れた脇道を進んだ先にあります。このため、薬師岳など周辺の主要な山への縦走ルート上にあるにも関わらず、登頂対象として意識されないこともあります。しかし、山頂からの展望は素晴らしく、特に北側にはどっしりとした山容の薬師岳を間近に望むことができます。

主な登山ルートとしては、有峰林道を進んだ先の折立を起点とするコースがよく知られています。折立ヒュッテを経由し、太郎兵衛平の太郎平小屋へと至り、そこから太郎山へ向かうルートです。また、岐阜県飛騨市側からの飛越新道や、同じく岐阜県側の打保を起点とする神岡新道も太郎山に至るルートとして挙げられます。これらのルートは、薬師岳から黒部五郎岳への縦走時に太郎山に立ち寄る際にも利用されます。山頂の東北東約300メートルには、登山の拠点となる太郎平小屋があり、休憩や宿泊に利用できます。周辺には薬師峠キャンプ指定地など、キャンプが可能な場所もあります。

周辺の地理と交通

太郎山の周辺には、薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳といった立山連峰の主要な山々が連なります。また、重要な峠として、太郎山と薬師岳の鞍部に位置する薬師峠（標高2,294m）や、赤木岳と黒部五郎岳の鞍部にある中俣乗越（標高約2,450m）があります。薬師峠にはキャンプ指定地が整備されており、管理棟やトイレ、給水施設も設けられています。

交通アクセスとしては、富山県富山市と岐阜県飛騨市にまたがる有峰林道が山域の西側を通っています。この林道の終点の一つである富山県林道真川線の終点には折立ヒュッテがあり、ここが太郎兵衛平への主要な登山口となります。夏期の登山シーズンには、富山駅から折立へ向かう富山地方鉄道の夏山バスが運行されます。マイカーやタクシーでのアクセスも可能ですが、有峰林道は夜間に通行規制があるため注意が必要です。公共交通機関を利用する場合、富山地方鉄道立山線の有峰口駅から南東へ約18キロメートル、高速道路を利用する場合、北陸自動車道の立山インターチェンジから南南東へ約31キロメートルの位置にあります。

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