奥平昌服

奥平昌服：激動の幕末を生き抜いた中津藩主

奥平昌服（おくだいら まさもと）は、豊前国中津藩の第8代藩主であり、中津藩奥平家の12代当主として、激動の幕末期を生き抜いた人物です。天保元年（1830年）、6代藩主奥平昌暢の次男として江戸に生まれました。幼少の頃に父を亡くしたため、当初は家督を継ぐことができませんでした。その後、7代藩主である叔父・昌猷の養子となり、天保13年（1842年）に昌猷が亡くなると、家督を相続することになります。

弘化2年（1845年）、従五位下・大膳大夫に叙位・任官。嘉永6年（1853年）の黒船来航という歴史的事件を経験しました。従来の記述では、昌服は鎖国攘夷を主張し、開国論を唱えていた祖父・昌高と対立していたとされてきました。しかし、近年の史料研究により、この記述には誤りがあることが明らかになっています。最新の研究では、昌服は開国に積極的な姿勢を示していたと考えられています。

安政2年（1855年）、祖父・昌高が亡くなると、藩政の実権は家老の奥平壱岐が握りました。しかし、昌服は間もなく壱岐を更迭し、自ら藩政改革に着手します。砲台建設や西洋軍事技術の採用など、近代的な藩政運営を目指した改革を推進しました。この改革においては、壱岐も重要な役割を果たしていたという見解も存在します。従来の昌服と壱岐の対立説は、史料に基づいて見直される必要がありそうです。

奥平家は譜代の名門であり、昌服自身は男系では薩摩藩島津家の血筋を引くことから、佐幕派として活動。長州征討にも参加しました。しかし、慶応4年（1868年）1月の鳥羽・伏見の戦いにおいて旧幕府軍が敗れると、状況を判断し、新政府軍への支持を表明。会津藩まで出兵するなど、時代の流れに柔軟に対応する姿勢を示しました。慶応4年5月6日、病気のため家督を養子の昌邁に譲り、隠居しました。

明治4年（1871年）に東京に移り住んだ昌服は、その後も明治18年（1885年）に正四位、明治23年（1890年）に従三位、明治29年（1896年）に正三位と、順調に叙位・叙爵を重ねました。そして、明治34年（1901年）2月27日、72歳で生涯を閉じました。

奥平昌服の生涯は、幕末という激動の時代を生き抜いた一藩主の物語です。鎖国論者であったか、開国論者であったか、その立場は従来の見解とは異なっている可能性があり、更なる史料の精査と研究が必要とされます。また、家老・奥平壱岐との関係性についても、従来の対立説は再考の余地があります。彼の藩政改革や、時代の変化への対応は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。彼の生き様は、歴史を研究する上で貴重な知見を与えてくれるに違いありません。

系譜

父：奥平昌暢（1809-1832）
母：照寿院
養父：奥平昌猷（1813-1842）
正室：松平照（1833-1884） - 煕姫、照桂院、松平容敬養女、保科正丕の娘、のち離縁
側室：奥平千代 - 鶴昌院
側室：鈴木安 - 誠隆院
* 養子：奥平昌邁（1855-1884） - 伊達宗城の四男

※その他の子女については、史料の確認が必要です。

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