奥田重盛

奥田重盛：忠義と武勇の生涯

奥田重盛は、江戸時代前期に活躍した武士であり、赤穂浪士四十七士として名高い人物の一人です。1647年（正保4年）に奥田孫太夫の子として生まれ、幼名は兵右衛門。後に西村清右衛門と名乗ることもありました。通称は孫太夫です。

重盛は、当初志摩国鳥羽藩の内藤家に仕えていましたが、1662年（寛文2年）に内藤忠政の娘が赤穂藩主・浅野長友（浅野長矩の父）に嫁いだのを機に、付人として赤穂藩に移り、江戸藩邸で勤務しました。その後も、浅野長友の没後も赤穂藩に留まり続けました。

1680年（延宝8年）、浅野長矩の叔父である内藤忠勝が、江戸幕府4代将軍徳川家綱の葬儀の場で永井尚長を殺害するという事件を起こし、鳥羽藩は改易となりました。この事件に際し、重盛は「喧嘩両成敗」にもかかわらず、内藤家のみが改易されたことに憤慨したと伝えられています。

その後も重盛は、主君・浅野長矩への忠義を貫き、赤穂藩に仕え続けました。その武芸の腕前は高く評価され、150石取りの武具奉行に任じられています。剣客として有名な堀内正春に師事し、堀部武庸と共に高弟として名を馳せ、大太刀の使い手として知られていました。また、男子がなかったため、近松行重の弟を養子に迎えています。

1701年（元禄14年）3月14日、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだことで、赤穂藩は改易され、浅野長矩は切腹しました。この事件後、重盛は江戸詰めの藩士である堀部武庸、高田郡兵衛と共に赤穂へ行き、家老大石良雄に赤穂城の籠城を強く求めます。赤穂城開城後、江戸に戻った重盛は、堀部、高田らと共に仇討ちを主張する急進派の中心人物として活躍しました。

浅野長矩の百日法要の後、重盛は高田、堀部と共に泉岳寺に参拝し、仇討ちを誓いました。彼らは元家老の安井彦右衛門を訪れ、仇討ちへの協力を求めますが、安井は曖昧な態度でこれを拒否しました。後に安井の陰口を知った重盛は激怒したと言われています。

大石良雄は、江戸の急進派を鎮めるため、原元辰、大高忠雄らを派遣しますが、重盛らは彼らを説得し、急進派に加えました。このため、大石良雄自らが江戸へ下り、重盛らを説得せざるを得ませんでした。

1702年（元禄15年）3月頃、重盛は父の名を継ぎ、孫太夫と名乗るようになります。深川八幡町、そして黒江町へと移り住み、医師・西村清右衛門と名乗り、養子の行高と共に潜伏生活を送りました。同年7月に行われた円山会議で仇討ちが決定。12月14日の討ち入りでは、表門隊に属し、二尺余の大太刀を手に、屋内で奮戦しました。

吉良義央が討ち取られた後、重盛は細川綱利屋敷に預けられます。そこで、堀内伝右衛門重勝との間でいくつかの逸話が残されています。切腹に際し、切腹の稽古をしたことがない重盛が、堀内に切腹の仕方を尋ねたところ、堀内が戸惑うと、富森正因が「ただ首を差し出せばよい」と答えたという逸話です。

1703年（元禄16年）2月3日、幕府は赤穂浪士46人に切腹を命じました。重盛は藤沢長右衛門の介錯で切腹し、57歳で生涯を終えました。主君・浅野長矩と同じ高輪泉岳寺に葬られ、戒名は「刃察周劔信士」です。重盛の忠義と武勇は、現在も人々に語り継がれる、赤穂浪士の象徴的な存在となっています。

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