妙興寺 (一宮市)

妙興寺

妙興寺は、愛知県一宮市にある臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を長嶋山、寺号を妙興報恩禅寺と称します。本尊は如意輪観世音菩薩と釈迦三尊で、開山は滅宗宗興です。境内には五つの塔頭があり、「尾張に杉田（過ぎた）の妙興寺」と古くから言われています。新陰流開祖の上泉信綱が修行した場所であり、無刀取り発祥の地としても知られています。現在では尾張地方屈指の大禅寺として、多くの参拝者を集めています。

歴史

妙興寺の創建以前には、妙興寺廃寺と呼ばれる古代寺院が存在していました。境内から出土する奈良時代の瓦から、8世紀には寺院建築があったことが確認されています。その後、寺院は衰退し廃寺となりましたが、数百年後の貞和4年（1348年）に、尾張国中島城主中島蔵人の次男である滅宗宗興が、亡き両親への報恩のため、南浦紹明を勧請開山として創建しました。伽藍が完成したのは貞治4年（1365年）のことです。足利義詮の祈願所、後光厳天皇の勅願寺となるなど、最盛期には塔頭8、末寺13を数えました。

しかし、応仁の乱を境に足利将軍家の庇護を失い、戦国時代の戦乱で寺領を失い衰退しました。一方で、前野広久による医王山天福寺の寄進のように、焼失した寺から寺領を寄進されることもありました。天正18年（1590年）には、寺の荒廃を憂いた豊臣秀次（または豊臣秀吉）によって、京都妙心寺から南化玄興が招かれ、再興が始まり、妙心寺の末寺となりました。秀次が200石を寄進した後、秀吉が300石を朱印地として与え、後に松平忠吉によって200石に減らされましたが、これが尾張藩主によって代々安堵されました。

明治23年（1890年）には火災で主要な堂宇を焼失しましたが、方丈は明治26年（1893年）、庫裏は明治30年（1897年）に再建されました。創建当初の遺構を伝える勅使門は国の重要文化財で、後光厳天皇より賜った勅額「国中無双禅刹」が掲げられています。

伽藍

境内全域が愛知県指定史跡となっており、一宮市博物館も設置されています。主な伽藍には以下のようなものがあります。

勅使門：室町時代の建造物で、国の重要文化財に指定されています。
総門：犬山城主成瀬正太の寄進によるものです。
鐘楼：江戸時代に建てられたもので、愛知県指定有形文化財に指定されています。

文化財

妙興寺には多くの文化財が所蔵されており、「尾張の正倉院」とも呼ばれています。主な文化財には以下のようなものがあります。

重要文化財

勅使門
紙本著色足利義教像 瑞渓周鳳賛：足利義政の花押があります。
絹本著色仏涅槃図
絹本墨画白衣観音図 良全筆 乾峰士曇賛：鎌倉から南北朝時代（14世紀）の作品。
絹本著色道仏二教諸尊図 4幅：中国・南宋から元時代（13世紀後半）の作品。
絹本著色十六羅漢像 16幅：中国・元時代の作品。
絹本墨画著色金泥文殊図 空谷明応賛
木造大応国師（南浦紹明）坐像：鎌倉時代（14世紀）の作品。
九条袈裟（南浦紹明所用）：南宋から元時代（13世紀後半）の作品。
九条袈裟（滅宗宗興所用）：南北朝時代の作品。
妙興寺文書 549通

愛知県指定有形文化財

梵鐘
南浦紹明塔銘牌：享徳2年（1453年）に建立されたもの。
紙本著色豊臣秀吉像：南化玄興賛（慶長5年（1600年））、伝狩野山楽筆
紙本墨画神農図：江戸時代（17世紀）、神前松徳筆、蘭叟紹秀賛
紙本墨画達磨図：江戸時代（17世紀）、神前松徳筆、蘭叟紹秀賛
木製漆塗彫根来大香合：室町末から安土桃山時代（16世紀）のもの。

一宮市指定有形文化財

不動明王像：平安時代（10-11世紀）の作品。
天部立像 2躯：平安時代（10-11世紀）の作品。
釈迦三尊像：南北朝時代（14世紀）、院派仏師院遵作
軒丸瓦：奈良時代（8世紀）の尾張国分寺所用瓦
木造滅宗宗興坐像：南北朝時代（14世紀）の作品。
絹本著色南化玄興像：安土桃山時代（16世紀）の作品。
紙本墨画出山釈迦図三尊図：室町時代（15世紀）、伝祥啓筆
絹本墨画淡彩不動明王像：嘉慶元年（1387年）、龍湫周澤賛筆
紙本墨画淡彩寿老人図：室町時代（15世紀）、万里集九賛
紙本墨画著色竹雉子図 足利義継筆：室町時代（16世紀）の作品。
鷹図：室町時代（15世紀）、万里集九賛
絹本墨画柳牛図：中国・元時代（13-14世紀）、毛倫筆
紙本墨画著色五位鷺図：江戸時代（17世紀）、伝相阿弥筆
絹本墨画墨梅図（白梅図）：中国・明時代（14-17世紀）、伝楊補之筆
紙本墨画墨梅図（紅梅図）：室町時代（16世紀）、雪崖筆
破墨山水図：室町時代（15世紀）、伝雪洞筆
蓮鷺図双幅：室町時代（15世紀）、雪洞筆
喚鐘：享徳2年（1453年）青銅製
手水鉢：江戸時代（18世紀）の御庭焼、尾張藩主による寄進
朱漆沈金膳：室町から安土桃山時代、寺伝では南化玄興が豊臣秀吉から拝領
湖州鏡 付朱漆塗鏡筥：中国・宋時代（10-13世紀）
建造物 16棟：総門、三門、仏殿、客殿、庫裡、唐門、開山門、玄関、禅堂、開山堂、侍者寮、衆寮、書院、明暢亭、雪爪庵、宝蔵、弁天堂

塔頭

耕雲院、種玉院、太陽院、清寥院、来薫院の五つの塔頭があります。かつては西住院、瑞芳院もありましたが、現在は故地を離れています。また、来薫院の北側には桂昌院がありました。

妙興寺そば

全国的に知られる妙興寺そばは、妙興寺の僧侶が考案したと伝えられています。

所在地

愛知県一宮市大和町妙興寺2438

交通手段

名鉄名古屋本線 妙興寺駅から徒歩約7分。

周辺

一宮市博物館

脚注

参考文献：
* 一宮市博物館編集・発行 『常設展示リニューアル記念 特別展 妙興寺展』 2014年10月17日

外部リンク

妙興寺紹介

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