姶羅郡

古代大隅国に存在した姶羅郡

姶羅郡（あいらのこおり、あいらぐん）は、古代律令制下の大隅国に存在した郡です。この郡は、現代の姶良郡とは異なり、和銅6年（713年）に日向国から大隅国が分立した際に、肝属郡、曽於郡、大隅郡とともに設置された4郡の一つでした。

姶羅郡の領域

正確な郡域は不明ですが、『和名類聚抄』に記載された郷名から、現在の鹿児島県鹿屋市周辺、具体的には大隅半島中央部に位置していたと考えられています。この郡は、平安時代中期には鹿屋、串伎、野裏、岐刀の4つの郷を有していました。鹿屋は現在の鹿屋市街地周辺、串伎は東串良町および旧串良町に比定されています。岐刀郷は、大隅郡にも記載されていることから、大隅国成立から平安時代にかけて両郡の領域に変動があったと推測されます。

姶羅郡の消滅

荘園の発達に伴い、姶羅郡は鎌倉時代には文献上から姿を消します。1197年の『大隅国図田帳』には、姶羅郡の名前は見られず、代わりに鹿屋院、串良院、姶良荘、姶良西俣といった荘園の名が登場します。姶良荘は旧吾平町、姶良西俣は現在の西俣小学校の名称として残っています。その後、肝属郡を拠点とする肝付氏が勢力を拡大し、その過程で姶羅郡は肝属郡に統合されたと考えられています。

江戸時代に入ると、この地は島津氏（薩摩藩）の支配下となり、鹿屋、串良、姶良、大姶良の各外城（後に「郷」と改称）は肝属郡に所属しました。江戸時代後期の『三国名勝図会』では、吾平山上陵の解説において、姶羅郡を消滅した郡として扱い、姶良郷（旧吾平町、現鹿屋市）と大姶良郷（旧大姶良村、現鹿屋市）を往時の地名として紹介しています。

現代においても、大姶良は鹿屋市の地域名として残っており、姶良は1947年に「吾平」と改称されましたが、姶良川という河川名としてその名が残っています。

現代の姶良郡との関係

現代の姶良郡は、桑原郡の西部が帖佐郡として独立し、その後、始良郡（しら）と改称されたことに起源を持ち、古代の姶羅郡とは直接の関係はありません。しかし、江戸時代に入ってから始良郡と姶羅郡が混同されるようになり、明治4年11月14日以降、「姶良（あいら）」の表記に統一されました。この誤表記が正式名称となり、1955年に発足した姶良町、2010年に発足した姶良市にも引き継がれています。

参考文献

「姶良郡」「姶羅郡」『角川日本地名大辞典 46 鹿児島県』 角川書店、1983年。
平田信芳『地名が語る鹿児島の歴史』春苑堂書店、1997年。

関連項目

消滅した郡の一覧
姶良

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