孟光

孟光（もう こう、生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の蜀漢にかけて活躍した政治家です。字は孝裕（こうゆう）。司隷河南尹洛陽県（現在の河南省洛陽市）の出身で、太尉を務めた孟郁（もういく）の一族に連なります。

事績

霊帝の時代に講部吏（教育関係の役人）となり、献帝が長安に遷都する際には、戦乱を避けて益州（現在の四川省）へ逃れました。益州では、当時益州を支配していた劉焉（りゅうえん）父子から手厚いもてなしを受けたと伝えられています。

劉備（りゅうび）が益州を平定した後、孟光は議郎（ぎろう）に任命され、許慈（きょじ）らと共に、蜀漢の宮中における儀礼制度の制定に尽力しました。

建安25年（220年）、群臣の一人として劉備に皇帝即位を勧める上表に名を連ねました。これは、魏（ぎ）の曹丕（そうひ）が献帝から禅譲を受けて皇帝に即位したことを受け、劉備にもその正当性を示す必要があったためと考えられます。

劉備の死後、劉禅（りゅうぜん）が皇帝に即位すると、符節令（ふせつれい、皇帝の命令を伝える役職）、屯騎校尉（とんきこうい、禁軍を率いる武官）、長楽少府（ちょうらくしょうふ、皇后の財産管理官）といった要職を歴任し、最終的には大司農（だいしんのう、国家の財政を司る官）に昇進しました。

延熙9年（246年）秋、蜀漢で大赦令が出された際、孟光は大将軍の費禕（ひい）に対し、「そもそも恩赦は、国家が衰退し、困窮が極まった時にやむを得ず行うものです。しかし、陛下は慈悲深く賢明であり、百官も職務に励んでいます。このような状況で、なぜ恩赦を頻繁に行い、悪人どもに恩恵を与える必要があるのでしょうか」と、公然と批判しました。費禕はこれに反論することができず、ただ謝罪するばかりだったと伝えられています。

孟光は、常にこのような調子で他人を批判していたため、周囲からは煙たがられる存在でした。そのため、鐔承（しんしょう）や裴儁（はいしゅん）といった、年功の浅い者たちよりも出世が遅れることになったとされています。

その後、ある事件に連座して免官となり、九十余歳でその生涯を終えました。

人物

孟光は、博識で古典に明るく、あらゆる書物を読みこなしていたと伝えられています。特に、『三史』（『史記』・『漢書』・『東観漢記』）の研究に力を注ぎ、漢王朝の古い制度に詳しかったとされます。『公羊春秋』を好み、『左氏春秋』を批判し、来敏（らいびん）と両伝の優劣を議論する際には、大声で自説を主張していたといいます。

陳寿（ちんじゅ）は、孟光について「博学をもって知られ、徳行によって称賛されることはなかったが、一代の学者であった」と評しています。

参考文献

* 「正史 三国志 5 蜀書」（陳寿 著、裴松之 注、井波律子 訳） ちくま学芸文庫 ISBN 4-480-08045-7

もう一度検索