来敏

来敏（らい びん）

来敏は、後漢末期から三国時代の蜀漢にかけて生きた儒学者で、字は敬達と名乗りました。彼の家系は、光武帝に仕えた功臣である来歙の末裔にあたり、父は霊帝の時代に司空まで昇りつめた来艶でした。本貫は荊州義陽郡新野県です。

生涯

後漢末の混乱期に、来敏は姉と共に荊州へと避難しました。姉の夫である黄琬が益州牧の劉璋と縁戚関係にあったことから、姉弟揃って劉璋に招かれ、賓客として迎えられました。来敏はそこで書物を広く読み、『三倉』や『広雅』といった訓詁学を深く研究し、文字の校正に熱心に取り組みました。

劉備が益州を平定した後、来敏は典学校尉に任命され、許慈、胡潜、孟光らと共に宮中儀礼の制定に携わりました。劉禅が立太子すると、劉巴の推薦により太子の家令に抜擢されました。

劉禅が皇帝として即位すると、来敏は虎賁中郎将に任じられました。諸葛亮が漢中へ赴任する際には、彼の要請に応じて軍祭酒・輔軍将軍となりましたが、ある事件に関与したため職を辞することになります。諸葛亮の死後、大長秋として成都に戻りましたが、再び免職となり、その後光禄大夫に昇進しました。

延熙7年（244年）に魏が興勢に侵攻した際、大将軍の費禕が出陣することになりました。来敏は費禕のもとを訪れ、囲碁の対局を申し込みました。出陣を間近に控えた慌ただしい状況にも関わらず、費禕はこれに応じ、集中して対局に臨みました。対局後、来敏は「先ほどはあなたを試しただけです。あなたは本当に信頼できる人物だ。必ず敵を打ち破ることができるでしょう」と述べました。果たして費禕が出陣すると、魏軍は敗走しました。

その後、来敏は過ちを犯して免職となりますが、再び執慎将軍に任じられました。度重なる免職の原因は、彼の言葉に節度がなく、行動が常軌を逸していたためだと言われています。『春秋左氏伝』を重んじる来敏と、『春秋公羊伝』を重んじる孟光は、しばしば議論を交わしましたが、その度に孟光は大声で騒ぎ立てました。孟光もまた慎みがなく議論を混乱させましたが、来敏の言動はさらにひどかったと伝えられています。しかし、彼は年長の学者であり、荊楚地方の名族の出身であり、さらに劉禅の東宮時代からの旧臣であったため、免職となっても再び起用されることが度々ありました。

景耀年間、97歳で亡くなりました。

子の来忠もまた経学に通じ、来敏の風格を受け継いでいました。大将軍の姜維を補佐して高く評価され、彼の下で参軍を務めました。

評価

『三国志』を編纂した陳寿は、来敏について「徳業に関する称賛はないものの、確かに一時代を築いた学者であった」と評しています。

三国志演義

羅貫中の小説『三国志演義』では、諸葛亮の第一次北伐に先立ち、名前のみが登場します。祭酒に任じられ、成都に残留し、他の文官と共に政務を任されました。

参考文献

* 陳寿撰、裴松之注『三国志』蜀書 来敏伝

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