孟達

孟達：忠誠と裏切りを繰り返した三国時代の武将

孟達（もうたつ、生没年不詳 - 228年）は、中国後漢末期から三国時代にかけて活躍した武将である。字は子敬、後に子度と改めた。司隷扶風郡出身で、父は孟佗、子は孟興、甥は鄧賢という。

孟達は、劉璋、劉備という二つの勢力に仕え、それぞれの勢力基盤確立に貢献した。しかし、最終的には魏へ降伏し、その後、謀反を起こしたため殺害されるという波乱に満ちた生涯を送った。正史『三国志』には独立した伝記を持たず、曹叡、司馬懿、劉曄、法正、劉封、費詩といった人物の伝記の中に断片的に事蹟が記されているのみである。また、部下に郤揖（郤正の父）を置いていたため、郤正の伝にも記述が見られる。なお、魏の安定太守に同姓同名の人物がいたことも特筆すべき点である。

劉備への仕えと複雑な人間関係

孟達の父は宦官の張譲に賄賂を贈り、涼州刺史の地位を得た人物であったと伝えられる。孟達は故郷にいたが、飢饉を逃れるため同郷の法正と共に益州の劉璋を頼った。優れた才能と弁舌の才能を持っていたとされている。

劉璋が漢中の張魯の脅威に対処するため、張松の勧めにより劉備に援軍を求めた際、孟達は法正と共に劉備を迎え入れた。その後、劉備は孟達を自軍に置いて重用した。劉備が益州を奪取した後、孟達は宜都太守に任命される。劉備の叔父・劉子敬と同じ字であったため、避諱の意を込めて字を子度に改めた。

劉備配下として孟達は漢中戦線で活躍し、房陵を攻略して太守の蒯祺（妻は諸葛亮の長姉）を殺害した。さらに上庸郡に進撃し、劉封・李厳と共に太守申耽を降伏させた。しかし、同僚の劉封とは良好な関係を築けておらず、軍楽隊の没収を巡る事件などが記録に残されている。

劉備への反逆と魏への亡命

関羽が荊州防衛中に北上し、樊城を包囲した際、上庸の劉封と孟達にも援軍が求められたが、二人はこれに応じなかった。関羽は孫権軍の攻撃を受け敗北し、殺害された。この事件により激怒した劉備は、関羽の救援に赴かなかった劉封と孟達を深く憎むようになった。

孟達は劉封との対立に加え、劉備からの処罰も恐れる立場となった。そのため、劉備に対して上表文を提出。過去の忠臣の例を挙げつつ、自らの罪を認め、房陵・上庸を返上し、辞任して自らを追放することを申し出て、4000戸を率いて魏へ亡命した。孟達に従って魏へ降伏した郤揖は、中書令史となった。

沛郡譙県に到着した孟達は、その落ち着いた振る舞いと風格から、将帥の才、卿相の器と評された。曹丕（文帝）は孟達を高く評価し、親しく接した。しかし、曹丕の側近の中には孟達を妬み、讒言する者もいたという。

その後、孟達は曹丕から散騎常侍・建武将軍に任命され、平陽亭侯に封じられた。さらに、房陵・上庸・西城の三郡を合併して新城郡とし、孟達を新城太守に任命した。干宝の『晋紀』によると、孟達は新城赴任当初、白馬塞に登り、劉封と申耽が上庸を失ったことを嘆いたという。

夏侯尚・徐晃と共に上庸を攻撃し、劉封を敗走させた。劉封は孟達からの助言に従わず、のちに劉備から責められ処刑された。この時、劉封は孟達の助言に従わなかったことを悔やんだという。

曹丕は孟達を寵愛したが、劉曄や司馬懿は孟達を信頼できない人物と見抜き、重用しないよう曹丕に進言していた。

魏への反逆と最期

孟達の反逆の経緯は諸説あるものの、黄初7年、曹丕の死と曹叡（明帝）の即位、そして親友であった桓階・夏侯尚の死によって孟達が不安になり、呉と通じたことが原因とされている。

諸葛亮は孟達と接触を試み、魏への反逆を促した。しかし、諸葛亮は孟達の誠意を疑い、救援をせず、孟達は司馬懿の攻撃を受け、斬殺された。

『魏略』によれば、孟達は国境に長く駐屯し、庇護者が次々と亡くなったことから不安を感じていた。諸葛亮はこれを察知し、孟達に接触し反逆を誘った。魏興太守申儀は孟達と不和であり、密かに孟達と蜀の密通を朝廷に報告していた。司馬懿は孟達を洛陽へ呼び寄せようとしたが、孟達はこれを拒否し、謀反を起こした。司馬懿は迅速な攻撃を行い、孟達を討伐した。

『晋書』によれば、諸葛亮は孟達の反逆を誘導し、司馬懿は孟達の挙兵を遅らせる策略を弄したとされる。しかし、司馬懿の予想外の迅速な攻撃により、孟達は僅か半月で敗北し、斬殺された。

孟達の首は洛陽で晒された。その子孫は蜀に仕えたが、蜀の滅亡後、故郷の扶風郡に戻ったとされている。

三国志演義における孟達

小説『三国志演義』では、孟達の字は子慶とされている。関羽の死後、劉封に積極的に関羽を見殺しにするよう進言したと描かれている。また、司馬懿の蜀侵攻計画に参加するものの、諸葛亮の策によって李厳と対峙することになり、良心の呵責から戦わずに撤退している。さらに、司馬懿軍に包囲された際に、徐晃を弓で射殺する場面も描かれている。

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