宇土虎雄

宇土虎雄：熊本近代スポーツの父

宇土虎雄（うと とらお、1891年1月30日 - 1986年12月23日）は、日本の柔道家であり、スポーツ指導者。講道館柔道9段。

柔道家として全日本選士権優勝などの実績を持つ一方、熊本県に様々な近代スポーツを紹介し、「熊本近代スポーツの父」や「ミスター熊本」とも呼ばれる。

経歴

長崎県南高来郡湯江村（現・島原市）に生まれる。鎮西学院中学在学中に柔道を始め、1912年に東京高等師範学校に進学。山下義韶や永岡秀一（いずれも後の講道館10段）に師事し柔道を学んだ。東京高師時代の同期には岡部平太や会田彦一、先輩には大谷武一や甲佐知定、後輩には東口真平や桜庭武らがいた。

1913年5月に講道館に入門。翌年6月に初段、同年10月には秋季紅白試合で9人抜きを達成し、二段に昇段。1915年1月に三段位を許され、1916年3月に師範学校を卒業後、九州学院で教授に就任。柔道以外にも陸上競技や水泳、相撲、ボートなど様々なスポーツを指導し、特に金栗四三より指導を受けた陸上競技ではスパイクシューズを、水泳ではクロールを熊本県に初めて紹介した。また、熊本県警察部の柔道教師や、旧制五高、熊本高等工業、熊本医大、熊本第二師範、熊本農業などの各校で嘱託を兼任し、永年に渡り柔道はじめ各種スポーツの普及に尽力した。

柔道家として

身長173cm、体重75kgという均整の取れた体躯を以って、左右の払腰や小外刈を得意とした。寝技にも強く、1925年の第1回熊本・福岡対県柔道大会では熊本県の大将として出場。2人抜くも3人目に敗れ、翌26年の第2回大会でも大将として出場するが引き分けに終わり、熊本県は連敗。雪辱を期す1927年の第3回大会では、小谷澄之に大将を譲り宇土は副将として出場。激戦の末、宇土は須藤金作に敗れるも、大将の小谷が須藤、森崎一郎を破って西文雄との大将戦に臨んだが、小谷が敗れ、大会は福岡県の3連勝となった。

1929年の第4回大会は、両県応援団の過熱により中止となった。宇土は後に、必勝を期していただけに無念であったと語っている。

1930年4月に六段に昇段。同年11月の第1回全日本選士権大会では、専門成年前期の部に出場し、徳三宝を破り、決勝戦で尾形源治に敗れたものの準優勝。1935年の第5回同大会では、細川善盛、旗野吉太郎、村治清治郎を破り、優勝を成し遂げた。

1936年の全日本東西対抗試合では西軍の主将に抜擢され、西軍を勝利に導いた。

スポーツ指導者として

1937年には体育研究のため渡米し、アメリカ柔道連盟の招聘で約半年間柔道の普及活動を行った。

戦後は1946年に熊本県体育会（のち体育協会）副会長および熊本陸上競技協会会長に着任。国民体育大会では、1947年から1975年まで熊本県選手団団長として入場行進を務めた。

1947年の熊本県柔道協会発足に伴い初代会長となり、以後30年以上に渡り会長職を務め、県内外での柔道普及に尽力。全日本柔道連盟理事や九州柔道協会副委員長なども歴任した。また、熊本県教育庁体育保険課でも尽力した。

これらの功績から、1958年に九段位に昇段。1960年には熊本県近代文化功労者に選ばれ、1967年には勲四等瑞宝章を受章。

晩年まで熊本県でスポーツの普及・振興にあたり、柔道の原理である「精力善用、自他共栄」を説き続けた。

1982年10月に体調を崩し入院。4年余りの入院生活を経て、1986年12月に老衰のため95歳で死去。

生前「長寿の新記録を作りたい」と語っていたが、その夢は叶わなかった。しかし、熊本県では「ミスター熊本」として、その名は広く知られている。

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