宇宙塵 (同人誌)

日本SFの黎明期を支えた同人誌「宇宙塵」

『宇宙塵』は、1957年から2013年まで発行された、日本最古のSF同人誌です。SF作家・翻訳家である柴野拓美（筆名・小隅黎）が主宰する「科学創作クラブ」（後に同人誌名と同じ「宇宙塵」に改称）によって発行され、SFの創作、翻訳、評論など、多岐にわたる内容を掲載しました。

創刊から発展

1957年5月に謄写版印刷で産声を上げた『宇宙塵』は、星新一、小松左京、筒井康隆、光瀬龍、梶尾真治、堀晃、田中光二、清水義範、夢枕獏、山田正紀といった、後に日本を代表するSF作家となる才能たちの作品発表の場となりました。

創刊当初は、日本空飛ぶ円盤研究会から星新一、斎藤守弘、光波耀子などが参加し、初期メンバーには、今日泊亜蘭、矢野徹、瀬川昌男、草下英明、石川英輔、宮崎惇、光瀬龍、安盛岩雄らが名を連ねています。

1973年には発行頻度が月刊から年数回に変更されましたが、2007年には通巻200号を達成。その歴史の中で、日本のSF界に多大な貢献を果たしました。

イベントとパロディ

1962年5月には、第1回日本SF大会（MEG-CON）が『宇宙塵』創刊5周年を祝う目的で開催されました。この年には、セルフパロディ同人誌「宇宙鹿」も発行され、その後も「宇宙塵紙」（1976年）、「宇宙馬鹿」（1990年）と、合計3号のパロディ同人誌が刊行されました。

出版界からの評価

同人誌でありながら、出版界からも高く評価された『宇宙塵』は、掲載された秀作を選りすぐった選集が3度刊行されています。

• - 1977年：講談社から『日本SF・原点への招待 「宇宙塵」傑作選』（全3巻）が刊行。20周年を記念して日本SF作家クラブが「宇宙塵二十周年を祝う会（コスミコン'77）」を開催し、フォレスト・J・アッカーマンがアメリカから招かれました。
• - 1982年：「宇宙塵二十五周年記念大会（YOITOCON'82）」が開催。『宇宙塵』は星雲賞特別賞を受賞しました。
• - 1987年：河出書房新社（河出文庫）から『新「宇宙塵」SF傑作選』（全2巻）が刊行され、30周年を祝いました。
• - 1997年：出版芸術社から『宇宙塵傑作選』(全2巻）が刊行され、40周年を記念。また、その歩みを綴った『塵も積もれば―宇宙塵40年史』も出版されました（2006年末に大幅な増補・改訂版が発行）。

終刊とその後

2010年に柴野拓美が死去した後、2013年に最終号となる204号が「柴野拓美　追悼」として刊行されました。この最終号には、柴野拓美の妻である柴野幸子へのインタビューが掲載されました。

掲載された著名作家

『宇宙塵』には、数多くの著名なSF作家が作品を掲載しています。

日本SF第一世代（1965年までにプロデビュー）

星新一、矢野徹、今日泊亜蘭、小松左京、筒井康隆、光瀬龍、宮崎惇、森優、石川英輔、小野耕世、眉村卓、平井和正、豊田有恒、斉藤伯好、加納一朗、伊藤典夫、高斎正、石原藤夫、広瀬正

日本SF第二世代以降

梶尾真治、堀晃、田中光二、清水義範、山田正紀、夢枕獏、斉藤英一朗、梅原克文

『宇宙塵』は、日本のSF史において、重要な役割を果たした同人誌であり、多くの才能を輩出した場所として、その功績は今もなお語り継がれています。

参考資料

• - 「日本SFと歩んだ半世紀 ◇同人誌「宇宙塵」の編集者、柴野さんしのび最終号◇」牧眞司 日本経済新聞2013年9月16日32面（文化）

外部リンク

• - 宇宙塵公式サイト - ウェイバックマシン（2010年7月24日アーカイブ分）
• - TOKON10プログレスレポート（聖地巡礼）

もう一度検索