宍人部

宍人部について

宍人部（ししひとべ）は、古代日本において鳥獣の肉を調理する専門の職業集団でした。この部は、皇室の料理に深く関与し、特に魅力的な料理を通じて天皇の食事を豊かにしていました。

成り立ちと歴史

この職業集団の起源は、『日本書紀』に記録された伝説にさかのぼります。雄略天皇2年の10月、天皇が吉野宮から遊猟を終えた際、狩りの獲物を調理する方法について考えました。天皇は、膳夫に調理を任せるか、自ら調理するかを群臣に尋ねましたが、彼らは答えることができず、これに憤慨した天皇は御者の大津馬飼を処刑してしまいました。

この事件を受け、皇太后である忍坂大中姫は、美しい采女を天皇に献上し、彼の機嫌を取ることにしました。彼女はさらに「宍人部」を設置することを提案し、群臣の理解が遅れたことを弁護しました。そして、膳臣である長野を推薦し、彼を含む数名がこの職に任命されました。このことから、宍人部は「膳部」（かしわでべ）から派生した職業であることが明らかになります。

昇進と分布

長野は、孝元天皇の皇子大彦命の子孫とされ、『新撰姓氏録』にもその系譜が記されています。大彦命は崇神天皇10年に北陸へ派遣され、彼の流れを汲む人々は越前国や山背国に「宍人臣」や「宍人」として分布していました。このように、宍人部は地域に根付いた存在となりました。

『日本書紀』によれば、磐鹿六鴈命が景行天皇の時代に「膳臣」の姓を賜ったことも記されています。さらに、崇峻天皇の時代には、宍人臣雁が東方諸国を観察する役割を担っていたことも明示されており、その活動範囲は広がっていたことが伺えます。 正倉院文書や武蔵国分寺瓦銘によると、武蔵国にも多くの宍人部の人々が居住し、役職についていたことが確認されています。

大膳職と内膳職

宍人部の中には、養老令制下で大膳職や内膳職に就いた者も存在しました。これにより、彼らは料理の専門家と見なされ、さらなる地位向上を果たしました。天武天皇の時代においては、宍人部のメンバーが「連」の姓や「朝臣」の姓を賜ることがあり、その社会的地位は格段に向上しました。

結論

以上のように、宍人部は古代日本において重要な役割を果たし、その成立と発展は複雑な歴史的背景を持つことが伺えます。この部は料理の技術だけでなく、それに連なる文化的な習慣をも形成し、後の時代にもその影響を与え続けたのです。

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