韻母

中国語の韻母（いんぼ）について

中国語の音節は、声母（頭子音）と韻母（母音を中心とした部分）で構成されます。韻母は、音節の中で声母の後に続き、声調を除いた母音を中心とする部分です。ただし、声調を韻母に含める場合もあります。

韻母の構成

韻母は、主に以下の3つの要素で構成されます。

1. 介音（かいおん）: 半母音で、主母音の前に置かれます。
2. 主母音（しゅぼいん）: 韻母の中心となる母音です。
3. 尾音（びおん）: 鼻音や二重母音を構成する補助的な母音です。

これらの要素を、韻母における部位としてそれぞれ「韻頭」、「韻腹」、「韻尾」と呼ぶこともあります。

韻と韻母の違い

韻文の押韻や韻書の分類では、介音を除いた韻腹と韻尾、それに音節全体にかかる声調（四声）を区別したものが用いられ、これを「韻」と呼びます。韻母は音節を構成する要素の一部であり、韻は押韻の際に用いられる概念です。

例

例えば、「東」（dōng）という字の発音を考えてみましょう。この場合、「d」が声母、「-ong」が韻母、「¯」が声調です。韻母「-ong」は、介音がなく、主母音「-o-」、尾音「-ng」で構成されます。

また、「光」（guāng）という字の場合、「g」が声母、「-uang」が韻母、「¯」が声調となります。韻母「-uang」は、介音「-u-」、主母音「-a-」、尾音「-ng」で構成されます。

これらの構成は、r化しない音節では普通話や方言を問わず共通しています。ただし、r化した音節ではこの構成から外れる場合があります。

伝統的な分類

伝統的な音韻学では、韻母を介音の特性から以下の4つに分類します。

開口呼（かいこうこ）: 介音がない、または介音が-a-, -o-, -e-で始まるもの。
斉歯呼（せいしこ）: 介音が-i-で始まるもの。
合口呼（ごうこうこ）: 介音が-u-で始まるもの。
撮口呼（さっこうこ）: 介音が-ü-で始まるもの。

また、韻尾の特性から以下の3つに分類します。

陰声韻（いんせいいん）: 母音で終わるもの。
陽声韻（ようせいいん）: 鼻音で終わるもの。
入声韻（にっせいいん）: 閉鎖音で終わるもの。

現代中国語の韻母

現代中国語（普通話）では、r化を除いて39の韻母が設定されています。

歴史的な変遷

中世中国語

中世中国語では、「韻書」で使われる韻字に、平・上・去・入の声調の違いによって異なる字が使われました。語尾子音のうち内破音の[p̚]、[t̚]、[k̚]は、それぞれ鼻音の[m]、[n]、[ŋ]の入声とされていました。この時代、韻と韻母は厳密には異なり、韻は韻母の主母音と尾音、それに声調を加えたものを指しました。

六朝から唐代の中国語をまとめた『広韻』では、206韻が設けられました。その後、漢詩の押韻の規範となる「平水韻」では、これが106韻に整理されました。

近世中国語

元代に作られた『中原音韻』では、中原地方における中国語で入声が消滅したことが反映されています。入声が平声・上声・去声のどれに変わったかを示しており、韻目を19韻にまとめて、同韻の字を集めた上で、それぞれがどういう声調であるかを示しています。

まとめ

韻母は中国語の発音において非常に重要な要素であり、音節の構成や押韻、そして歴史的な変遷を理解することで、中国語の奥深さを知ることができます。韻母の知識は、中国語の学習や研究において非常に役立つでしょう。

関連項目

声母について'>声母
声調について'>声調
四呼について'>四呼

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