宮原線

宮原線：山間の秘境を走った忘れられた鉄道

大分県玖珠郡九重町恵良駅と熊本県阿蘇郡小国町肥後小国駅を結んでいた宮原線は、国有鉄道の地方交通線として、昭和12年（1937年）に一部区間が開業しました。しかし、太平洋戦争の激化により延伸工事が中断され、昭和18年（1943年）には全線が休止、レールは戦時中の金属供出に回されたと言われています。

戦後、昭和23年（1948年）に営業を再開し、昭和29年（1954年）には肥後小国駅まで全通しました。全長26.6km、6駅という短い路線ながら、大分県と熊本県の県境を越える、山間部を縫うように走る路線として注目を集めました。農林資源の開発や観光路線としての期待もかけられましたが、利用客の低迷が続き、昭和59年（1984年）12月1日、全線が廃止されることとなりました。

路線概要と運行状況

宮原線は、全線単線、非電化の路線でした。軌間は1067mmで、閉塞方式は票券閉塞式を採用していました。廃止時の輸送密度は165人、営業係数は1728という低い数値を示しており、採算の悪さがうかがえます。

列車運行は、豊後森駅（久大本線との接続駅）から恵良駅を経由して肥後小国駅に至るものでした。当初は蒸気機関車が使用されていましたが、昭和35年（1960年）頃には気動車に置き換えられました。運行本数は時代によって変遷し、最盛期には全線直通列車が6往復ありましたが、廃止直前には大幅に減便され、3往復のみとなりました。車両はキハ07形、キハ40形、キハ53形などが使用されていました。

建設から廃止まで

宮原線の建設は、改正鉄道敷設法別表第113号に規定された佐賀県から大分県に至る予定線の一部として計画されました。しかし、壮大な計画の一部として開業したものの、その後の路線計画変更や利用客の低迷により、宮原線は盲腸線として孤立し、その運命を決定づけてしまいました。

昭和10年（1935年）に着工され、昭和12年（1937年）に恵良 - 宝泉寺間が開業。その後、昭和29年（1954年）に肥後小国駅まで延伸されました。しかし、昭和46年（1971年）には貨物営業を廃止、昭和56年（1981年）には第1次特定地方交通線として廃止が承認され、最終的に昭和59年（1984年）に全線廃止となりました。廃止後は、大分交通、その後は玖珠観光バスが代替バス路線を運行していますが、一部区間は廃止されています。

廃線跡の現状と遺構

現在、宮原線の廃線跡は、一部区間が遊歩道として整備されています。恵良駅や町田駅、宝泉寺駅などの駅跡には、ホームや駅名標などが残されており、往時を偲ばせる風景が残っています。特に、堂山川橋梁などの7本のコンクリートアーチ橋は国の登録有形文化財に指定され、その美しい姿は多くの写真愛好家を引き付けています。これらの橋梁は竹筋コンクリート造であり、一部からは竹片が発見されています。小国町では、これらの遺構を地域資源として活用する取り組みが行われています。

かつて、この路線は、豊かな自然と静寂に包まれた山間部を走っていました。その風景は、今では写真や記録の中にしか残されていませんが、廃線跡を訪れれば、かつての面影を垣間見ることができるでしょう。宮原線の歴史は、地方交通線の盛衰と、地域の変遷を物語る貴重なものです。

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