宮尾舜治

宮尾舜治は、1868年に新潟県で生まれ、日本の官僚、外地行政官、そして政治家として多岐にわたる分野で活躍しました。彼の人生は、地方の名主の息子としての生い立ちから、東京での勉学、そして異例の経歴を経て、国家の中枢を担う立場へと昇り詰めるという、非常に興味深い軌跡をたどっています。

生い立ちと学業

宮尾は、越後国頸城郡広島村（現在の新潟県）の名主である宮尾権九郎の長男として誕生しました。彼の家系は、その村を開拓したことで知られており、地域社会において重要な役割を果たしていました。1881年、宮尾は小島荷裳塾に入塾し、学問の基礎を築きました。その後、1886年には第一高等中学校予科に入学、1889年には本科に進学しました。しかし、彼の人生はここで一つの転機を迎えます。

「せんべい学士」の誕生

大学在学中、宮尾は下宿先の隣に住んでいた瓦煎餅職人の話から、煎餅屋の開業に興味を持つようになります。実家の父を説得し、資金援助を受けて1890年、両国で「紀文堂」という煎餅屋を開業しました。この店は大当たりし、宮尾は多忙な日々を送ることになります。しかし、その結果として学校の欠席が増え、1891年には本科2年を落第してしまいます。この頃から彼は「せんべい学士」という異名で呼ばれるようになりました。それでも宮尾は学業を諦めず、翌年には第一高等中学校を卒業、帝国大学法科大学に進学しました。1896年には法律学科（独法）を優等で卒業し、銀時計を受領するほどの秀才でした。

官僚としてのキャリア

大学卒業後、宮尾は大蔵省に入省し、官房第二課に配属されました。同年12月には文官高等試験行政科試験に合格し、税務監督官、神戸税関監視部長などを歴任しました。1900年には台湾総督府に転じ、事務官として民政部税務課に配属されました。その後、安平税関長兼打狗税関長、淡水税関長、民政部財務局税務課長、専売局長、殖産局長など、要職を歴任しました。また、1910年には鉄道部長事務取扱も務めました。

拓務局と関東都督府

1910年9月、宮尾は内地に戻り内閣拓務局に移りました。ここでは第一部長、第二部長、そして拓務局副総裁を歴任しました。1917年7月には再び外地へと赴き、関東都督府民政長官に就任しました。

県知事、北海道庁長官、そして帝都復興

1919年4月、関東都督府が廃止されると、宮尾は愛知県知事に任命され、内地に戻りました。その後、1921年5月には北海道庁長官に就任し、農業の振興に尽力しました。1923年9月には帝都復興院副総裁に就任し、関東大震災後の東京復興に大きく貢献しました。また、一時的に同院の土地整理局長も兼務しました。

東洋拓殖総裁と晩年

1923年12月に退官した後、宮尾は国策会社の東洋拓殖総裁に任命され、京城（現在のソウル）に移りました。1924年11月までその職を務めた後、1928年12月に再び東拓総裁に再任され、1930年12月まで務めました。1932年には錦鶏間祗候を仰せ付けられています。1934年には貴族院勅選議員に勅任され、研究会に所属し、亡くなるまでその職にありました。晩年には東京市会に関わり、1937年の選挙で当選しましたが、直後に持病の糖尿病が悪化し肺炎を併発して亡くなりました。彼の墓は多磨霊園にあります。

栄典と著作

宮尾は1913年に正四位に叙され、1930年には帝都復興記念章を受章しました。また、『統制原理としての厚生経済』という著書を執筆し、ド・エツカの『平和的なる海外発展地モザンビク - 葡領東阿弗利加』を翻訳しました。彼の伝記としては、黒谷了太郎編の『宮尾舜治伝』があります。


宮尾舜治は、その波乱に満ちた人生の中で、教育、経済、行政、政治など、多岐にわたる分野で顕著な功績を残しました。彼の足跡は、激動の時代を生きた一人の人物の、不屈の精神と類まれなる才能を示すものとして、後世に語り継がれています。

もう一度検索