宮本悳

宮本 悳（みやもと いさお）は、1930年11月29日に生まれ、1996年7月28日にその生涯を閉じた日本の競馬関係者です。騎手として華々しい功績を残した後、調教師に転身し、日本の競馬界に貢献しました。

千葉県館山町（現在の館山市）出身。父親が大の競馬好きだった影響もあり、騎手の道を志します。1948年、国営競馬（現在のJRA）の武輔彦厩舎（阪神競馬場）に騎手見習いとして入門。厳しい修業を経て、1951年に騎手免許を取得しデビューを果たしました。

デビュー当初はなかなか騎乗のチャンスに恵まれず、苦労を重ねる日々でした。しかし、1956年に所属を京都競馬場の橋本正晴厩舎へ移したことが転機となります。橋本厩舎と交流のあった馬主、三好諦三氏にその真面目な仕事ぶりが認められ、三好氏所有馬の主戦騎手として抜擢されることになったのです。

1959年、リュウショウで重賞初勝利を挙げたのを皮切りに、「リュウ」の冠名で知られる三好氏所有の競走馬と共に次々と重賞のタイトルを手にしてキャリアを開花させます。中でも特筆すべきは、リュウフォーレルとのコンビでした。1963年、リュウフォーレルで天皇賞（秋）を制覇し、自身にとって初の八大競走優勝を飾ると、暮れにはグランプリ競走である有馬記念も制し、同馬と共に競馬界の頂点に立ちました。また、リュウフォーレル引退後も、リュウファーロスと共に重賞戦線を賑わせ、4つの重賞タイトルを獲得しています。しかし、宮本氏はリュウファーロスで八大競走を勝たせられなかったことを深く悔やみ、その思いは後々まで彼の胸に残ったといいます。

1968年には、谷水信夫氏が新たに開設したカントリー牧場の初年度産駒であるタニノハローモアに騎乗し、東京優駿（日本ダービー）を制覇。多くの騎手が憧れる「ダービージョッキー」の称号を獲得しました。

1971年2月、騎手として積み重ねたキャリアに区切りをつけ、調教師へと転身します。騎手時代の通算成績は3111戦388勝。その勝利の3分の2以上は、騎手として円熟期を迎えた30代以降に挙げたものでした。

調教師としては、騎手時代から縁の深かった三好氏や谷水氏などの所有馬を中心に厩舎を開業しました。しかし、自身の欲のなさが影響したのか、当初は成績が振るわなかった時期もありました。開業から17年目の1988年、タニノスイセイで朝日チャレンジカップを制し、調教師として初めて重賞勝利を挙げます。これを契機に成績は上向き、1991年には年間22勝を挙げ、翌1992年にはディクターガールでのスワンステークス勝利を含む自己最高の年間24勝を記録しました。1993年も21勝を挙げるなど、調教師としての手腕を発揮し、安定した成績を収めていました。

しかし、そのキャリアは突然終わりを迎えます。1996年7月27日、小倉競馬場への出張中に脳溢血により倒れ、翌28日に息を引き取りました。享年65歳。志半ばでの急逝でした。調教師としての通算成績は4110戦349勝でした。

競馬に情熱を注ぎ、騎手として多くの名馬を勝利に導き、調教師としても活躍した宮本 悳。彼の残した功績は、日本の競馬史に深く刻まれています。

主な騎乗馬（宮本騎乗時の優勝重賞）

リュウフォーレル（1963年 天皇賞・秋、有馬記念 など重賞7勝）
タニノハローモア（1968年 東京優駿 など重賞3勝）
リュウショウ（1959年 京都4歳特別）
ホマレリュウ（1959年 宝塚杯）
リュウファーロス（1966年 阪神大賞典、1967年 大阪杯、1968年 日本経済新春杯、スワンステークス など）

主な管理馬

タニノスイセイ（朝日チャレンジカップ、北九州記念）
ディクターガール（スワンステークス）
タニノクリスタル（アネモネステークス ※タニノギムレットの母）

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