宮本武蔵 一乗寺の決斗

宮本武蔵 一乗寺の決斗：壮絶な決闘と時代劇の粋

1964年、東映が製作・配給した時代劇映画『宮本武蔵 一乗寺の決斗』は、吉川英治原作の小説『宮本武蔵』を基にした5部作シリーズの第4作目です。内田吐夢監督と、主演に中村錦之助（萬屋錦之介）を迎え、その年の邦画配収ランキングで第6位、2億2500万円という興行収入を記録した話題作でした。128分という上映時間、富士フイルムカラー、東映スコープによる映像美も魅力の一つです。中村錦之助は本作での演技が評価され、第10回ホワイト・ブロンズ賞主演男優賞を受賞しています。

白熱の決闘シーンと綿密なロケ

本作の見どころは何と言っても、ラストシーンを飾る宮本武蔵と吉岡一門による壮絶な決闘です。「七十三対一」という圧倒的不利な状況下で武蔵が奮闘する様は、手に汗握る迫力です。この決闘シーンの撮影は、実際の決闘地である京都市左京区の一乗寺下り松に似た地形を持つ滋賀県饗庭野（通称：八町田）で行われました。

ロケ地は湿地帯だったため、撮影には多くの困難が伴いました。トラックで土を運び道を作り、人工の下り松を設置するなど、現場のセッティングに1ヶ月、延べ300人の人夫を動員し、総費用500万円をかけて準備されました。さらに、撮影は自衛隊の実弾射撃練習場の隣で行われたため、実弾が飛び交う危険な環境の中での撮影となりました。スタッフは1963年10月から11月にかけて約20日間、泊まり込みで撮影に臨み、泥まみれになりながら連日早朝から夕刻まで撮影を続けました。

また、本作では、他社に先駆けて京都市東山区の国宝三十三間堂での夜間ロケが許可されたことも特筆すべき点です。これらの苦労が凝縮された、リアリティあふれる映像は、本作の大きな魅力となっています。

豪華キャストが織りなす人間ドラマ

本作には、中村錦之助演じる宮本武蔵だけでなく、多くの実力派俳優が出演しています。武蔵の旧友である本位田又八を木村功、武蔵のライバルである吉岡清十郎を江原真二郎、そして佐々木小次郎を高倉健が演じています。他にも、丘さとみ、入江若葉、岩崎加根子、浪花千栄子、平幹二朗、佐藤慶など、個性豊かな俳優陣が脇を固め、物語に深みを与えています。

これら豪華なキャスト陣が織りなす人間ドラマは、武蔵の生き様だけでなく、周囲の人々の心情や葛藤も丁寧に描かれ、単なる剣戟映画を超えた感動的な作品に仕上がっています。

スタッフとキャスト

スタッフ、キャスト陣は以下の通りです。

スタッフ
製作：大川博
監督：内田吐夢
原作：吉川英治
企画：辻野公晴、小川貴也、翁長孝雄
脚本：鈴木尚之、内田吐夢
撮影：吉田貞次
音楽：小杉太一郎
美術：鈴木孝俊
装置：館清士
装飾：佐藤彰
録音：渡辺芳文
照明：和多田弘
編集：宮本信太郎
助監督：鎌田房夫、篠塚正秀、野波静雄、菅孝之
進行主任：神先頌尚

キャスト
宮本武蔵：中村錦之助 (萬屋錦之介)
朱美：丘さとみ
お通：入江若葉
吉野太夫：岩崎加根子
本位田又八：木村功
林彦次郎：河原崎長一郎
赤壁八十馬：谷啓
お杉：浪花千栄子
吉岡伝七郎：平幹二朗
大田黒兵衛：佐藤慶
木賃宿の親爺：織田政雄
叡山の僧：沢村宗之助
城太郎：竹内満
植田良平：香川良介
烏丸光広：徳大寺伸
青木丹左ェ門：花沢徳衛
沢庵：三國連太郎（ノンクレジット）
お甲：木暮実千代（ノンクレジット）
阿巌：山本麟一（ノンクレジット）
壬生源左衛門の妻：松浦築枝
壬生源次郎：西村雄司
横川勘助：国一太郎
南保余一兵衛：水野浩
御池十郎左衛門：鈴木金哉
民八：団徳麿
吉岡の高弟：中村錦司
吉岡の門弟：関山耕司、有川正治、唐沢民賢
花山院忠長：林彰太郎
徳大寺実久：那須伸太朗
墨菊太夫：霧島八千代
りん弥：小野恵子
壬生源左衛門：山形勲
灰屋紹由：東野英治郎
妙秀：東山千栄子
本阿弥光悦：千田是也
吉岡清十郎：江原真二郎
佐々木小次郎：高倉健

まとめ

『宮本武蔵 一乗寺の決斗』は、豪華なキャスト、壮絶な決闘シーン、そして綿密なロケと撮影によって作り上げられた、時代劇映画の傑作です。歴史的にも価値の高い作品であり、現代においても多くの観客を魅了し続けています。

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