寺前正雄

寺前 正雄

大阪府大阪市城東区に生まれた寺前正雄（てらまえ まさお）氏は、1972年5月2日生まれの元プロ野球選手です。右投右打の投手として、高校時代には甲子園で活躍し、プロの世界へと進みました。

高校時代

北陽高校に進学した寺前氏は、2年生の秋にはエースとしてチームを牽引しました。府大会ではベスト4まで勝ち進み、特に準決勝では後にプロ入りする入来祐作投手を擁するPL学園を相手に完封勝利を収めるという快投を見せました。近畿大会でも初戦で育英高校の戎信行投手と投げ合い、再び完封勝利。続く天理高校戦では南竜次投手との投手戦の末に惜しくも敗れましたが、チームをベスト8に導きました。

3年生となった1990年には、春の選抜高等学校野球大会（センバツ）に出場。チームは快進撃を続け、ベスト4まで駒を進めました。準決勝の新田高校戦では、寺前氏の力が最も試される試合となりました。この試合は延長17回という死闘となり、寺前氏は一人でマウンドを守り抜き、238球を投げ込み、17個の三振を奪うという圧巻の投球を見せました。しかし、延長戦の末にサヨナラ本塁打を浴び、甲子園決勝進出はなりませんでした。この激闘で対戦した新田高校の宮下典明選手は、後にプロ野球の近鉄バファローズでチームメイトとなるという不思議な巡り合わせとなりました。

夏の府大会では、準決勝で宮田正直投手が先発する上宮高校に敗れ、春夏連続での甲子園出場は叶いませんでした。

高校時代、寺前氏は変則的なオーバースローのフォームで投げており、その独特な投げ方は「アルバトロス投法」と呼ばれ注目を集めました。しかし、プロ入り後はすぐにそのフォームを矯正することになります。

プロ野球時代

1990年秋に行われたプロ野球ドラフト会議において、寺前氏は近鉄バファローズから1位指名を受け入団します。この年の近鉄は、多くの球団が注目していた小池秀郎投手の指名に失敗したため、寺前氏を「外れ1位」として指名しました。入団当初は、エースナンバーとも言える背番号「18」を与えられ、将来を期待されました。

プロ入り後は前述の通り投球フォームの矯正に取り組みました。一軍での登板機会を得るまでには時間を要し、プロ6年目の1996年シーズン終盤にようやく一軍初昇格を果たしました。同年9月24日に行われた対福岡ダイエーホークス戦（藤井寺球場）では、9回裏に鈴木貴久選手の代走として起用されるという、投手としては極めて異例の形でプロ公式戦初出場を果たしました。

そのわずか2日後の9月26日、対千葉ロッテマリーンズ戦（千葉マリンスタジアム）では、8回裏に5番手投手として登板し、念願のプロ初登板を果たしました。この初登板のイニングで対戦した打者をわずか3球で3者連続三振に仕留めるという、鮮烈なデビューを飾りました。さらに、シーズン最終戦となる10月6日の対千葉ロッテマリーンズ戦（藤井寺球場）では、プロ入り後初めて先発のマウンドに上がりました（結果は5回1/3を4失点で敗戦投手）。

翌1997年には、開幕直後から一軍に登録され、先発ローテーションの一角として期待されるようになります。4月27日の対オリックス・ブルーウェーブ戦（大阪ドーム）ではプロ初完投を記録するなど、遅咲きの活躍が期待されました。しかし、好投しながらも打線の援護に恵まれない試合が多く、この年も含め、結局プロ野球の一軍公式戦で白星を手にすることはできませんでした。

1998年シーズン終了後、寺前氏は近鉄バファローズを自由契約となります。

現役続行を目指し、1999年には阪神タイガースへ移籍しました。背番号は「58」となりましたが、残念ながら阪神では一度も一軍のマウンドに立つことはできませんでした。このシーズン終了後、阪神から戦力外通告を受けます。

他球団での現役続行を模索し、オリックス・ブルーウェーブの入団テストを受けましたが、これは不合格に終わりました。この結果を受け、プロでの一軍未勝利のまま現役を引退することを決断しました。

現役引退後

プロ野球選手としてのキャリアに区切りをつけた寺前氏は、実家が営む運送業の事業を継承することを発表し、新たな道を歩み始めました。

人物・エピソード

寺前氏は身長186センチと長身で手足が長く、彫りの深い端正な顔立ちをしていました。その容姿から、特に女性ファンからの人気が高かったと言われています。

詳細情報

プロ入り初記録

初出場：1996年9月24日、対福岡ダイエーホークス24回戦（藤井寺球場）、9回裏に鈴木貴久の代走で出場
初登板：1996年9月28日、対千葉ロッテマリーンズ22回戦（千葉マリンスタジアム）、8回裏に5番手で救援登板・完了、1回無失点
初奪三振：同上、8回裏に諸積兼司から
初先発：1996年10月6日、対千葉ロッテマリーンズ26回戦（藤井寺球場）、5回1/3を4失点で敗戦投手
初完投：1997年4月27日、対オリックス・ブルーウェーブ3回戦（大阪ドーム）、9回8失点（自責点5）で敗戦投手

背番号

18 （1991年 - 1993年）
52 （1994年 - 1998年）
58 （1999年）

寺前正雄氏は、高校時代の甲子園での熱投やプロ入り後の異色の経歴を持つ一方で、プロでは苦難も経験した投手でした。しかし、その野球人生は多くの人々の記憶に残っています。

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