寺尾亨

寺尾亨は、1859年に福岡藩士の二男として生まれました。幼少期に藩校修猷館で学び、その後、司法省法学校に進学し、ボアソナードに師事して刑法を学びました。法学校の同窓には、後に寺尾の養女となる女優・東山千栄子の父である渡辺暢がおり、彼は寺尾の妹と結婚しています。

1884年に法学校を卒業後、判事を務めましたが、1891年に東京帝国大学の教授に就任。その後、国際法研究のためフランスに留学しました。帰国後、東京帝国大学で国際法・国際私法の教授として教鞭を執る傍ら、外務省参事官も兼務しました。1899年には法学博士の学位を取得しています。

1903年、寺尾は七博士意見書に名を連ね、ロシアとの早期開戦を主張しました。早くからアジア主義を提唱し、孫文やラース・ビハリ・ボースといったアジアの独立運動家を支援しました。特に、孫文が辛亥革命を起こした際には、大学教授の職を辞して現地に駆けつけ、孫文を補佐しました。革命が失敗に終わり、孫文が日本へ亡命した後も、寺尾は彼を支援し続けました。

寺尾は、法学者としての活動だけでなく、アジアの独立運動を支援したことで知られています。彼の思想は、当時の日本の知識人たちに大きな影響を与え、後のアジア主義運動に繋がっていきました。

1925年9月15日、脳溢血のため死去。

親族
兄：寺尾寿（天文学者）
弟：小野隆太郎（司法官）
養子：寺尾進（商工省官僚）、東山千栄子（女優）

参考文献
秦郁彦編『日本近現代人物履歴事典』東京大学出版会、2002年。ISBN 978-4-13030-120-6。343頁

関連事項
戸水寛人
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* 宇野浩二の小説『出世五人男』には寺尾一家をモデルにしたと思われる描写がある。

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