寺嶋陸也

寺嶋陸也（てらしま りくや）氏は、1964年4月30日に東京都で誕生した、日本の作曲家でありピアニストです。神奈川県立相模原高等学校を経て、東京芸術大学音楽学部作曲科を卒業し、同大学院でさらに研鑽を積みました。学生時代から、彼は作曲とピアノ演奏の両分野で精力的に活動を開始。卒業後もその活動はさらに広がり、作曲や演奏に加え、指揮やコンサートの企画なども手がけるなど、その才能を多角的に発揮しています。

作曲家としての寺嶋氏は、極めて幅広いジャンルの作品を創作しています。代表的なものとしては、オペラ作品が挙げられ、『ガリレイの生涯』、『末摘花』、『グスコーブドリの伝記』、『あん』といったオペラを手がけています。また、アントン・チェーホフの作品に基づくヴォードヴィル『タバコの害について』のような、演劇的な要素を持つ作品も作曲しています。彼の作品には、日本の伝統楽器を用いたものが多く見られるのも特徴です。例えば、オーボエ、三味線、打楽器のための『異郷の景色』や、尺八、二十絃箏と管弦楽のための協奏曲などがあります。正倉院に伝わる復元楽器を用いた『大陸・半島・島』のような、歴史的な楽器に関心を寄せた作品も生み出しています。合唱曲も多数作曲しており、特に中学校および高等学校のNHK全国学校音楽コンクール（Nコン）の課題曲として作曲された『変』（2001年度）や『風になりたい』（2005年度）は広く知られています。これらの作品は、多くの学生によって歌われ、日本の学校合唱のレパートリーとして定着しています。

ピアニストとしても、寺嶋氏は活発に活動しています。自身の作品の初演や演奏はもちろんのこと、幅広い時代のクラシック音楽や、他の作曲家の作品を演奏しています。数多くの録音に参加しており、ソロ作品からアンサンブル、声楽との共演まで、その活動は多岐にわたります。例えば、ヴァイオリンの川畠成道氏、チェロの堀了介氏、オーボエの宮本文昭氏、クラリネットの赤坂達三氏、マリンバの神谷百子氏といった著名な器楽奏者や、声楽家の奈良ゆみ氏、合唱団の東京混声合唱団など、国内外の多岐にわたるアーティストたちと共演し、多数の録音を残しています。これらの録音には、武満徹や林光といった日本の現代作曲家の作品から、スティーヴン・フォスターやエドヴァルド・グリーグ、クルト・ヴァイルといった海外の作曲家の作品、さらには日本の唱歌や民謡のアレンジまで含まれており、演奏家としての彼の幅広い興味と適応力を示しています。

彼の作品の多くは楽譜として出版されており、国内外の演奏家や研究者によって演奏・研究されています。これらの出版物には、多くの日本の詩人や文学者（谷川俊太郎、宮澤賢治、川崎洋、茨木のり子など）の詩に付曲した合唱曲や歌曲集が含まれており、言葉と音楽の結びつきを深く追求していることが伺えます。また、他の作曲家や編曲家（林光、新実徳英、池辺晋一郎、信長貴富など）との共作・共編による楽譜集も数多く出版されており、日本の音楽界における共同制作や交流の一翼を担っています。編曲家としても優れており、ビゼーの『アルルの女』やラヴェルの『ボレロ』といったオーケストラ作品を様々な室内楽編成に編曲した楽譜も出版されています。

さらに、彼は音楽専門誌などに寄稿も行っており、「作曲家の耳に響くバッハ」や「音楽家と社会との関わり」といったテーマで音楽に関する自身の考えを発信しています。

寺嶋陸也氏は、作曲、ピアノ演奏、指揮、企画、執筆と、音楽の様々な側面からアプローチする稀有な音楽家です。その幅広い活動と豊富な作品群は、現代日本の音楽シーンにおいて重要な存在感を示しています。特に、日本の伝統的な要素と現代的な感性を融合させた作品や、教育現場でも広く歌われる合唱曲の創作、そして多岐にわたる分野での演奏活動は、彼の芸術家としての深さと広がりを物語っています。

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