小城ノ花正昭

小城ノ花 正昭

小城ノ花 正昭（おぎのはな まさあき、1935年11月29日 - 2006年12月16日）は、佐賀県小城郡三日月村（現在の小城市）に生まれ、出羽海部屋に所属した元大相撲力士である。本名は本村 正昭、後に小岩井 正昭と改めた。最高位は西関脇。現役時代の体格は身長174cm、体重124kgと、当時としては決して恵まれた体格ではなかったが、左四つからの寄りや下手投げを得意とし、その巧みな技で多くのファンを魅了した。

大相撲への道

実家は農業を営んでおり、中学卒業後は家業に従事していた。幼少の頃から相撲好きだった父の影響を受け、地元の村相撲には積極的に参加していたという。16歳で大相撲界への道を志し、名門・出羽海部屋に入門。1952年1月場所で初めて土俵を踏んだ。郷里の地名と師匠（元横綱常ノ花）の四股名にちなんだ「小城ノ花」の四股名で、力士としての第一歩を踏み出した。

出世と幕内での活躍

小城ノ花は比較的順調に番付を上げていった。1957年3月場所では西幕下4枚目の地位で8戦全勝を飾り、幕下優勝を遂げる。この活躍が認められ、同年5月場所で新十両昇進。この場所を12勝3敗と大きく勝ち越すと、続く9月場所でも再び12勝3敗の好成績を収め、翌場所での新入幕を確実にした。1957年11月場所で念願の新入幕を果たす。入幕後しばらくは幕内下位での土俵が続いたが、徐々に実力をつけ番付を上げていった。

特に輝きを放ったのが、東前頭2枚目の地位にあった1960年9月場所である。この場所では、当時の横綱・朝潮や大関・若羽黒といった上位陣を次々と撃破し、9勝6敗と勝ち越しを果たす。この目覚ましい活躍が評価され、自身初の三賞となる殊勲賞を受賞した。この殊勲賞獲得が足がかりとなり、翌11月場所では初の三役となる東張出小結に昇進。この場所も大関・柏戸を破るなど奮闘したが、惜しくも7勝8敗と負け越した。しかし、これを機に幕内上位の番付に定着する。

最高位・関脇への到達

1962年9月場所で西前頭4枚目ながら10勝5敗と二桁勝利を挙げた勢いに乗り、翌11月場所で自己最高位となる西関脇に昇進した。関脇として迎えたこの場所でも、横綱・柏戸や関脇・豊山といった強豪を相手に、勝ち越しとなる9勝6敗の成績を収め、技能賞を受賞した。続く1963年1月場所、3月場所も関脇の地位を守り、合計3場所関脇に在位した。この他、1961年11月場所では西前頭筆頭の地位で横綱朝潮や大関琴ヶ濱らを破りながら三役復帰を逃すなど、番付運に恵まれない側面もあった。

相撲ぶりと部屋での存在感

小城ノ花は、その小柄な体格を補うかのように体が非常に柔軟で、相手の懐に素早く潜り込む巧みな前捌きを持っていた。得意の左四つになると、そこから粘り強く寄り立てたり、相手の体勢を崩しての下手投げで勝負を決める相撲を展開した。その技術に裏打ちされた巧緻な相撲は「玄人受けする相撲」として、相撲通から高く評価されていた。当時、同部屋の絶対的横綱であった千代の山が引退し、若手の佐田の山が台頭してくるまでの期間、小城ノ花は幕内上位の地位で安定した成績を残し続け、名門・出羽海部屋を支える重要な柱として貢献した。

引退、そして指導者の道へ

1963年以降は怪我なども影響したか、成績に波が見られるようになり、番付を落とす場所も増えていった。1966年9月場所で西前頭15枚目で3勝12敗と大きく負け越し、新入幕から9年間にわたって守り続けた幕内の座から陥落することが確定した。十両に陥落した1967年3月場所でも負け越し、さらに場所後には「番付削減」という協会の施策の影響を受けて幕下への陥落が決定してしまう。東幕下2枚目まで番付を下げて迎えた1967年5月場所を初日から休場し、この場所限りでの現役引退を表明した。通算成績は522勝521敗9休、幕内在位は54場所だった。

現役引退後は年寄・高崎を襲名し、出羽海部屋付きの親方として後進の指導に当たった。指導者としては、二人の息子を大相撲の世界へ導き育てたことが特筆される。長男の昭和（後の小城乃花）と次男の康年（後の小城錦）は、父と同じ出羽海部屋で稽古を積み、揃って幕内力士として活躍するという親孝行ぶりを見せた。

晩年と逝去

2000年、停年退職を目前にして、長男である準年寄・小城乃花（10代高崎）に年寄名跡である高崎を譲り、相撲協会を退職した。退職後も相撲界を見守っていたが、2006年12月16日午後5時50分、肝臓癌のため東京都墨田区にある次男・小城錦の自宅で逝去した。享年71歳。

小城ノ花には、現役時代、生まれつきの天然パーマだったため、場所で髷を結う際に床山が苦労したという微笑ましい逸話も残されている。力士として、そして親方として、長きにわたり相撲界に貢献した人物であった。

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