小室信夫

小室信夫：激動の時代を駆け抜けた実業家・政治家

小室信夫（こむろ しのぶ）は、天保10年（1839年）に丹後国で生まれ、明治31年（1898年）に没した日本の実業家、政治家です。初名は利喜蔵、後に信太夫と改め、号を訒葊と称しました。官位は従五位、族籍は東京府士族です。

幕末の動乱期

豪商の家に生まれた小室は、京都で倒幕運動に参加し、足利三代木像梟首事件に関与したため幕府に追われる身となりました。その後、肥後勤皇党などの志士たちと交流し、三条実美や桂小五郎からの密書を携えて徳島に逃れました。しかし、捕えられ投獄されましたが、戊辰戦争勃発により釈放され、徳島藩士に取り立てられました。

明治新政府での活躍

明治維新後、小室は新政府に出仕し、権弁事や岩鼻県知事を歴任しました。庚午事変（稲田騒動）では、政府から徳島藩大参事として派遣され、事態の収拾に尽力しました。その後、少議官、三等議官を歴任し、ヨーロッパ諸国へ派遣され政治調査を行いました。しかし、途中で退任し、自費でイギリスに留学し、鉄道や産業経営を研究しました。

政党設立への貢献

帰国後、小室は古澤迂郎とともに、板垣退助、後藤象二郎、副島種臣、江藤新平らに政党設立と民撰議院設立建白書を提出することを説き、その起草にあたりました。また、大阪会議を斡旋し、大久保利通、木戸孝允、板垣退助の和解に貢献しました。

実業家としての手腕

その後、小室は実業界に転身し、東京株式取引所、京都鉄道、奥羽鉄道、阪堺鉄道、小倉製紙所、第八十九国立銀行、第百三十国立銀行、北海道製麻、大阪紡績、東京製薬など、数多くの企業の設立に関与し、重役や社長を歴任しました。また、品川弥二郎とともに共同運輸会社（後の日本郵船）を創設するなど、日本の産業界の発展に大きく貢献しました。

貴族院議員として

明治24年（1891年）には貴族院議員に勅選され、その死まで在任しました。

家族

小室は複数の妻との間に16人の子を儲けました。長男の小室佐喜蔵は第百三十国立銀行頭取を継ぎ、次男の小室三吉は三井同族会理事を務めました。また、娘婿には、自由民権運動家の小室信介、岡野敬次郎、小平浪平、東北帝国大学医学部教授の井上嘉都治、安藤正純の弟・安藤弘などがいました。

その他

小室は、平安神宮の建立に際し、一対の手水鉢を寄進しました。


小室信夫は、幕末の動乱期から明治の近代化という激動の時代を駆け抜け、政治家、実業家として日本の発展に大きく貢献した人物です。

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