小石栄一

小石栄一：映画監督、脚本家、そして作詞家

小石栄一（こいし えいいち）は、1904年9月7日に福岡県鞍手郡で生まれ、1982年10月21日に78歳で没した、日本の映画監督、脚本家、映画プロデューサーです。後年には作詞家としてもその才能を発揮しました。

若き日の情熱と映画界への足跡

東京で青春時代を過ごした小石は、南米への憧れを抱き拓殖大学に入学しますが、その夢は叶わず中退。その後、関東大震災を機に関西へ移り、1924年に東亜キネマ甲陽撮影所に入社します。ここでは俳優としてエキストラ出演をこなしながら、脚本家を目指して修行に励みました。

1926年4月、小石は衣笠貞之助が設立した衣笠映画聯盟に参加し、前衛的な作品として知られる『狂つた一頁』でチーフ助監督を務めます。同作の撮影終了後、マキノ・プロダクション御室撮影所にて自身のオリジナル脚本『灰色の街』が高見貞衛監督によって映画化され、脚本家としてデビューを果たしました。

監督としての飛躍

1927年、小石は『灰色の街』でタッグを組んだ高見貞衛との共同監督作品『学生五人男 闘争篇』を発表。この作品で、満22歳にして映画監督としてデビューしました。その後も高見監督の『敗残者』で脚本を手がける傍ら、自らのオリジナル脚本による監督作品『闘争曲線』を制作するなど、精力的に活動を展開しました。1928年には『光線を捕へた男』、『女心紅椿』といった監督作を発表し、その才能を開花させていきます。

その後、小石は松竹下加茂撮影所へ移籍し、当時人気上昇中であった林長二郎を主演に迎え『怪盗沙弥麿』を監督。1930年以降は、市川右太衛門プロダクション、片岡千恵蔵プロダクションといった時代劇の製作プロダクションを渡り歩き、様々な作品を手がけました。

1936年、小石は新興キネマ東京撮影所（現在の東映東京撮影所）に入社。しかし、翌1937年には日本軍の下士官として大陸へ出征し、映画制作から一時離れることになります。1939年に撮影所へ復帰しますが、1942年には戦時統制により新興キネマが大映と合併。小石は大映東京撮影所（現在の角川大映撮影所）へ移籍することとなりました。

戦後の活動と晩年

第二次世界大戦後も大映東京撮影所に所属していた小石でしたが、1954年に東映東京撮影所へ移籍。1962年に『歌う明星 青春がいっぱい』を監督したのを最後に東映を退社し、自身のプロダクションを設立しました。

監督業の傍ら、作詞家としても才能を発揮し、久保幸江が歌唱した『母子鶴の歌』や、美空ひばりが歌った『風が吹くたび』、『続・べらんめえ芸者の歌』、『波頭子守歌』など、数々の楽曲の作詞を手がけました。

1982年10月21日、小石栄一は78歳でその生涯を閉じました。映画監督、脚本家、プロデューサー、そして作詞家として、多岐にわたる分野で才能を発揮し、日本の映画史にその名を刻みました。

主なフィルモグラフィー

『狂つた一頁』 (1926年) - 助監督
『灰色の街』 (1926年) - 原作・脚本
『学生五人男 闘争篇』 (1927年) - 共同監督
『敗残者』 (1927年) - 原作・脚本
『闘争曲線』 (1927年)
『光線を捕へた男』 (1928年)
『女心紅椿』 (1928年)
『白野弁十郎』 (1929年)
『野狐三次』 (1930年)
『挑戦』 (1930年)
『十三番目の同志』 (1931年)
『若い力』 (1939年)
『激流』 (1940年)
『八乙女の歌』 (1942年) - 共同監督
『流れる星は生きている』 (1949年)
『暴夜物語』 (1951年)
『旋風家族』 (1959年)
『白い通り魔』 (1959年)
『父と娘』 (1959年)
『ふたりの休日』 (1959年)
『べらんめえ芸者』 (1959年)
『続ずべ公天使　七色の花嫁』 (1960年)
『続々べらんめえ芸者』 (1960年)
『遥かなる母の顔』 (1960年)
『べらんめえ芸者罷り通る』 (1961年)
『がめつい奴は損をする』 (1961年)
『べっぴんさんに気をつけろ』 (1961年)
『カメラ・トップ屋　お嬢さんが狙ってる／お色気無手勝流』 (1961年)
『復讐は俺らの歌』 (1961年)
『黄門社長漫遊記』 (1962年)
* 『歌う明星 青春がいっぱい』 (1962年)

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