小貫岩夫

小貫岩夫は、1967年4月18日北海道小樽市に生まれました。同志社大学神学部を卒業後、大阪音楽大学で声楽を専攻し、声楽家としての道を歩み始めました。

大学時代は同志社グリークラブに所属し、ソリストとしてその才能を開花させました。1995年には、大阪音楽大学在学中にモーツァルトのオペラ『魔笛』のタミーノ役に抜擢され、テオ・アダムとの共演でオペラデビューを果たしました。この成功を機に、翌年にはドイツのケムニッツ市立歌劇場に招聘され、その歌声は地元紙でも絶賛されました。

文化庁オペラ研修所第11期を修了後、1998年には文化庁派遣によりイタリアのミラノへ留学し、さらに研鑽を積みました。帰国後は数々のコンクールで優勝・入選を果たし、二期会や新国立劇場を中心に活躍しています。市川團十郎演出の『鳴神』、宮本亜門演出で文化庁芸術祭大賞を受賞した『コジ・ファン・トゥッテ』、実相寺昭雄演出の二期会『魔笛』タミーノ役、佐渡裕プロデュースの『こうもり』アルフレード役など、数々のオペラで主役を務め、観客を魅了しました。

2013年からは3年連続で二期会のオペレッタの主役を演じ、2018年には東京二期会公演『魔弾の射手』で主役のマックスを務めるなど、新たな境地を切り開いています。また、コンサートでも主要オーケストラとの共演で高い評価を得ている他、テレビやラジオにも度々出演しています。2011年、2013年、2015年にはウィーンオペラ舞踏会管弦楽団のニューイヤーコンサートのソリストを務め、2010年からは毎年、東京と大阪でリサイタルを開催し、その歌声は多くの人々を魅了しています。

2013年には、天皇明仁・皇后美智子（当時）臨席のチャリティー・ボールで演奏し「御言葉」を賜りました。また、イタリアのフィレンツェでは、元首相夫妻主催のコンサートに招かれるなど、国際的にも活躍しています。

合唱指導者としても、関西学院グリークラブ、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、慶應義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団、立教大学グリークラブ男声、同志社グリークラブ、法政大学アカデミー合唱団、東京アカデミー合唱団、しなの合唱団など、数多くの合唱団でヴォイストレーナーを務めています。さらに、大阪外国語大学グリークラブOB（東京）の指揮者としても活躍しています。

二期会会員、二期会オペラ研修所講師、日本声楽アカデミー会員としても活動しており、後進の育成にも力を入れています。

エピソードとして、同志社グリークラブ在籍中、東西四大学合唱演奏会のステージリハーサルで、小貫が歌う姿を見た畑中良輔が、「トップテナーに皇帝ペンギンみたいなすごいのがいるわね」と評した話が残っています。これは、当時の小貫が指先を外側に開いて歌う癖があったことに由来しますが、畑中はその卓越した才能を既に見抜いていたと言えるでしょう。

主なディスコグラフィーには、『いつも微笑みを - オペレッタ名曲集』（2010年）、『ふたりのしらべ』（2017年）、『美しく青きドナウ - ウィンナ・ワルツ&名曲集』（2014年）などがあります。

小貫岩夫は、その卓越した歌唱力と豊かな音楽性で、オペラ界、コンサート界、合唱界と幅広く活躍し、日本の音楽界に貢献し続けています。

もう一度検索