小野友五郎

小野友五郎：激動の時代を駆け抜けた異才

小野友五郎（おの ともごろう、文化14年（1817年） - 明治31年（1898年））は、幕末から明治にかけての日本において、数学者、海軍軍人、そして財務官僚として多岐にわたる分野で活躍した人物です。彼の生涯は、まさに日本の近代化を象徴するかのようです。

生い立ちと算学の修業

小野友五郎は、文化14年に常陸笠間藩士の家に生まれました。幼少の頃から算学に才能を示し、藩の算学者である甲斐駒蔵に師事し和算を学びました。その後、江戸に出て長谷川弘に師事し、さらに算学の腕を磨きました。この頃から、和算家として「広胖」、洋算家として「友五郎」と呼ばれるようになります。

幕府出仕と洋学の導入

嘉永5年（1852年）には、師である甲斐駒蔵と共に『量地図説』を著します。同年、江戸幕府天文方に出仕し、その傍らで江川英龍に砲術、軍学、オランダ語を学びました。オランダの航海術書を翻訳し『渡海新編』として幕府に提出するなど、洋学の導入にも貢献しました。

海軍伝習所と咸臨丸での渡米

安政2年（1855年）、小野友五郎は長崎海軍伝習所に入学し、測量・航海術を学びました。その知識と語学力を買われ、万延元年（1860年）には、日米修好通商条約批准書交換のための遣米使節を護衛する咸臨丸に、測量方兼運用方（航海長）として乗り組み、アメリカへと渡航します。この航海で、小野友五郎はアメリカ海軍の測量士官ジョン・ブルック大尉と親交を深め、彼の測量技術は高く評価されました。

国産軍艦建造への貢献

帰国後、小野友五郎は国産蒸気船の建造を幕府に進言し、文久2年（1862年）には日本初の国産蒸気軍艦「千代田形」の建造を指揮しました。これは、日本の海軍近代化に大きく貢献する出来事でした。

戊辰戦争と謹慎生活

慶応3年（1867年）には再び渡米し、幕府軍艦の調達にあたりました。ストーンウォール号（後の甲鉄）の購入に成功し、その他最新の兵器や技術書を買い付けました。帰国後、勘定奉行並に昇進しますが、戊辰戦争が勃発し、鳥羽・伏見の戦いを経て徳川軍が敗北すると、恭順派によって罷免され、禁固刑を受けます。

明治維新後の活動

明治維新後、小野友五郎は出獄を許され、民部省、工部省に出仕し、鉄道建設などの民生分野で活躍しました。また、数学教育にも熱心で、珠算の復活を建言したり、小学校用の教科書を編纂するなど、教育の普及にも尽力しました。晩年は、製塩事業にも取り組み、その技術改良に貢献しました。

その死と遺産

明治31年（1898年）、小野友五郎は82歳でその生涯を閉じました。彼の多岐にわたる功績は、日本の近代化に大きく貢献したと言えるでしょう。小野友五郎は、幕末から明治にかけての激動の時代を、その才能と情熱をもって駆け抜けた、まさに時代の先駆者でした。

小野友五郎を題材とした作品

鳴海風『怒濤逆巻くも 幕末の数学者小野友五郎』上、下（新人物往来社、2003年）
今野敏『天を測る』（講談社、2020年）


これらの作品を読むことで、より深く小野友五郎の生涯と業績を知ることができます。

参考文献

* 藤井哲博『咸臨丸航海長小野友五郎の生涯 幕末明治のテクノクラート』(中公新書)

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