山本信次郎

海軍軍人でありカトリック信者でもあった山本信次郎

山本信次郎（1877年 - 1942年）は、日本の海軍軍人であり、カトリック教会の熱心な信者でした。最終階級は海軍少将。正三位勲二等功五級に叙せられています。

生い立ちとカトリックとの出会い

山本信次郎は、1877年（明治10年）12月22日に、相模国鎌倉郡川口村（現在の神奈川県藤沢市片瀬）の旧家に次男として生まれました。実家はマリア会の別荘として家を貸しており、その縁から、小学校卒業後にカトリック系の暁星中学校に入学します。当初はキリスト教に偏見を持っていたものの、修道士たちとの交流を通して、次第にその教えを理解するようになりました。

父親は寺の檀家総代であったため、カトリックへの入信に大反対しましたが、信次郎は諦めずに説得を続け、三度目でようやく許可を得て洗礼を受けました。洗礼名は「ステファノ」。

卒業を目前にした彼は、進路に悩みますが、校長であったアルフォンス・ヘンリック神父の助言により、軍人の道を志すことになりました。

海軍軍人としての活躍

1898年（明治31年）に海軍兵学校を卒業（26期）。1900年（明治33年）に海軍少尉に任官し、その後、海軍少将にまで昇進しました。

日露戦争では、日本海海戦に旗艦「三笠」の分隊長として参加。秋山真之とニコライ・ネボガトフ少将の降伏交渉では、フランス語の通訳を務めました。

1909年（明治42年）に海軍大学校を卒業。東郷平八郎附属副官、イタリア大使館付武官などを歴任し、1919年（大正8年）から1937年（昭和12年）まで東宮御学問所御用掛として、当時皇太子であった昭和天皇に仕えました。1921年（大正10年）には、皇太子のヨーロッパ5カ国訪問に随行し、ローマ教皇ベネディクトゥス15世との会見を実現させるために尽力しました。

カトリック信者としての活動

山本信次郎は、カトリック信者としても積極的に活動しました。政府と教会の仲介役を務め、神社参拝問題の解決に努めた他、教皇庁特派使節としてピウス11世に謁見し、南洋諸島の宣教者問題の解決に尽力しました。

1923年頃、父親の遺産である片瀬の土地を分譲し、宣教活動の費用に充てました。その際、ヨーロッパで経験したキリスト教に基づく町づくりを理想とし、駅前の商店、学校、教会を中心としたコミュニティ形成を計画。1925年には、妻と共に片瀬に転居し、自宅でマリア会やイエズス会の司祭によるミサを10年間行いました。妻の没後、東京に戻り、片瀬の土地はシャルトル聖パウロ修道会に寄贈しました。

1938年7月には、教皇ピウス11世の代理としてブラジルに派遣され、サンパウロ市で、日本人宣教師の中村長八神父に「大聖グレゴリオ勲章」を授与しました。

また、自宅を解放して青少年を育成する公教会青年会を設立し、これが後に全国的な組織へと発展。「カトリック新聞」の前身である「カトリック・タイムズ」を創刊するなど、教育・啓蒙活動にも力を注ぎました。

その他の活動

読書を趣味とし、1906年（明治39年）に吉原重俊の次女、千代子（後にカトリック教会の洗礼を受ける）と結婚。三男二女をもうけました。

1942年（昭和17年）、波乱に満ちた生涯を閉じました。

栄典

1900年（明治33年）2月20日 - 正八位
1901年（明治34年）12月17日 - 従七位
1903年（明治36年）12月19日 - 正七位
1908年（明治41年）12月11日 - 従六位
1914年（大正3年）1月30日 - 正六位
1918年（大正7年）1月30日 - 従五位
1922年（大正11年）12月28日 - 正五位
1924年（大正13年）3月24日 - 従四位

家族

父：庄太郎（鎌倉郡長、県会議員）
母：ミツ
兄：百太郎（片瀬村の収入役、郵便局長、江ノ島電鉄の大株主）
弟：三郎（桂太郎首相秘書官）
妻：千代（吉原重俊の二女）
子：一、正、玄、武子、貞子
養子：ムメ（百太郎の長女）

親族

義父：吉原重俊（初代日本銀行総裁）

山本信次郎は、海軍軍人としての職務を全うする傍ら、カトリック信者として信仰を貫き、社会貢献にも積極的に取り組んだ人物でした。彼の生涯は、軍人、宗教家、そして社会活動家としての多様な側面を示しています。

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