山田寒山

山田寒山（やまだ かんざん）

山田寒山は、安政3年（1856年）に生まれ、大正7年（1918年）に没した明治時代の篆刻家です。僧侶でありながら、詩書画にも才能を発揮しました。

生涯

尾張国愛知郡長久手村（現在の愛知県長久手市）に生まれた寒山は、曹洞宗の僧侶でした。18歳の頃に小曽根乾堂を訪ねて篆刻を学び始め、24歳で福井端隠に入門し、高芙蓉の流れを汲む古体派の篆刻を修めました。明治16年（1883年）には最明寺（熊野市二木島町）の住持となりますが、明治19年（1886年）に辞任し大坂へ移りました。その後、明治28年（1895年）に東京へ移り住み、芝瓢箪池畔に芝仙堂という庵を結びます。

明治30年（1897年）には清国へ渡り、呉昌碩と親交を深め、その門下となりました。伊藤博文の自用印を制作したことから知遇を得て、交流を深めます。倭寇に奪われたとされる蘇州寒山寺の梵鐘を国内で捜索しましたが発見には至らず、新たな梵鐘を鋳造する際に伊藤博文に銘文の撰定を依頼しました。その後、寒山寺檀徒総代を託されています。清国からの帰国後、伊藤博文らの賛助を得て、大正4年（1915年）に千葉県海上郡野尻村字長山（現在の銚子市長山町）に寒山寺別院を建設し、住職となりました。

明治40年（1907年）には、河井荃廬、初代中村蘭台、五世浜村蔵六、岡本椿所らと丁未印社を結成しました。また、益斎富鴻の『印章備正』の刊行や、中村不折らとの書会開催など、精力的に活動し、後進の育成と篆刻芸術の発展に尽力しました。

篆刻家の木村竹香とは新潟の同郷であり、生涯の友として交流しました。木村竹香が編集した著名な印譜『羅漢印譜』には、寒山の傑作が収録されています。また、木村竹香の次男正平を娘婿に迎え、篆刻の道を継がせています。

作風と評価

寒山の篆刻は、豪放磊落な作風で知られています。高芙蓉の正統な流れを汲み、自らその五世を称しました。篆刻には、篆書だけでなく、隷書、楷書、行書、草書、大和古印体、仮名、梵字など、自由な発想で様々な書体を用い、印材も石印だけでなく、鋳造印、陶印、木印など多様な素材を用いています。また、篆刻以外にも、詩、書に優れ、画、陶芸にも才能を発揮しました。生涯を清貧に過ごしたと伝えられています。

大正7年（1918年）12月26日、下谷区下谷町にて62歳で亡くなりました。戒名は「自得院寒山想潤居士」といい、紀州最明寺に葬られました。鎌倉円覚寺にも分骨されています。

著作

『羅漢印譜』木村竹香編
『瓦礫放光』
『金石結縁』
『日本印叢』

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