岩下密政

岩下 密政（いわした みつまさ）

岩下密政は、1914年1月9日に山梨県中巨摩郡玉幡村（現在の甲斐市西八幡）で生まれた、日本の著名な騎手および競走馬調教師です。農家の三男として育ち、幼少期から馬と親しんでいた岩下は、19歳の時に上京し、東京競馬倶楽部の田中和一郎厩舎で騎手見習いとしてのキャリアをスタートさせました。

騎手としての活躍

岩下は、1934年に正騎手としてデビューし、同年9月にセイサンで初勝利を収めます。その後は「追える騎手」としての名声を高め、1940年にはトキノチカラで帝室御賞典・春を制覇しました。この勝利は、彼にとって特殊競走での初めての勝利でもあり、その年は自己最多の35勝を記録しました。

1942年、トキノチカラの馬主である菊池寛の仲人を介して結婚。以降、太平洋戦争での競馬休止を経て、1950年から田中厩舎のトキノミノルの主戦[[騎手]]に。トキノミノルとのコンビは連続優勝を重ね、皐月賞と東京優駿（日本ダービー）を制し、10戦10勝という成績を収めます。しかしながら、その後トキノミノルが突然の破傷風により急死し、三冠達成の夢は叶いませんでした。また、その年の2月には長男が誕生し、トキノミノルにちなみ「実」と名付けられました。

その後も、岩下は1954年にゴールデンウエーブを初めて騎乗し、東京優駿を制しました。この勝利によって、彼は史上2人目のダービー2勝騎手となります。岩下は左利きであったため、特に左回りの競馬コースでの技術に秀でており、ゴールデンウエーブの左斜行の癖を克服するために騎乗を期待されていました。なお、彼以降、テン乗りで東京優駿を勝った騎手は長い間現れず、2023年にオーストラリアのダミアン・レーンがタスティエーラで勝利するまで69年待つことになります。

引退と調教師としての道

1955年には、ヒロイチで優駿牝馬（オークス）を制勝し、1959年に騎手を引退しました。引退後は調教師としてのキャリアを歩み始めます。彼は多くの名馬を育成し、その技術と経験を次世代に伝えました。

しかし、1972年7月7日、調教師会の会合からの帰路に交通事故に遭い、58歳という若さでこの世を去りました。彼の逝去は競馬界に大きな衝撃を与え、彼の名は今も多くの競馬ファンや関係者の記憶に深く刻まれています。

主な騎乗馬と成績

岩下の主な騎乗馬には、トキノチカラ（1940年阪神帝室御賞典・春）、スタミナ（同年中山農林省賞典障害・秋）、ロックホルト（1950年目黒記念・春）、トキノミノル（1950年朝日杯三歳ステークス、皐月賞、東京優駿）、ゴールデンウエーブ（1954年東京優駿）、ヒロイチ（1955年優駿牝馬）などが挙げられます。また、調教師としての成績には、ヨコハマ（1967年東京障害特別・秋）などがあります。彼の競馬界における業績は、今も多くの人々によって語り継がれています。

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