岩倉家

岩倉家：明治維新を彩った名家の栄光と影

岩倉家は、村上[[源氏]]久我家の庶流に当たる由緒ある公家・華族の家系です。公家としての家格は羽林家、華族としては公爵家に位置づけられ、特に明治維新における功績で知られています。家祖は久我晴通の四男、具堯。当初は相国寺の僧侶でしたが、還俗して堂上家を興し、家号を桜井から洛北の岩倉村の所領に因んで岩倉と改めました。

封建時代の岩倉家

堂上源氏十家のひとつに数えられ、羽林家として高い家格を有していました。家業は有職故実であり、家禄は150石。岩倉家からは、臨済宗の高僧、一絲文守も輩出されました。文守は幕府の権力に迎合する禅宗界の現状を嘆き、隠者として高潔な生活を送ったことで知られています。後水尾上皇を始め、多くの宮廷貴族から敬愛を受け、仏頂国師の称号を授与されました。また、岩倉具視が隠棲した霊源寺を開山した人物としても有名です。
江戸時代中期には、当主の恒具と尚具親子が桃園天皇の側近として活躍し、神道にも精通していましたが、宝暦事件に巻き込まれ、失脚しました。しかし、明治維新後に明治天皇より勤王の功が認められ、追贈されています。

明治維新後の激動

岩倉家の歴史を語る上で欠かせないのが、明治維新の立役者、岩倉具視の存在です。堀河家から岩倉家へ養子に入った彼は、王政復古と幕府転覆に尽力し、明治政府において重要な役割を果たしました。太政大臣三条実美に次ぐ右大臣に就任し、大久保利通と共に明治政府を主導した、まさに時代の中心人物でした。岩倉使節団の団長も務め、日本の近代化に大きく貢献しました。

維新の功績により5000石の賞典禄が下賜され、これは公家の中でもトップクラスの額でした。明治9年には金禄公債が発行され、岩倉家の額は旧公家華族の中でも上位にランクインしていましたが、旧大名華族とは大きな差がありました。具視の死後、正一位太政大臣を追贈されました。

明治17年の華族令施行により、具視の嫡男、具定が父の功績により公爵に叙せられました。本来は子爵相当の家格でしたが、具視の功績により3階級特進が認められました。また、具視の他の息子や孫も男爵に叙爵され、岩倉家は華族社会においても大きな影響力を持っていました。具視の次男である具義は奈良興福寺に入り、後に還俗して南岩倉家を創設しました。

初代公爵具定は、学習院長や宮内大臣を歴任するなど活躍しましたが、2代公爵具張の代になると、家計は大きな危機に直面することになります。具張は、北海道の鉄道延伸計画を巡る投機話に騙され、巨額の負債を抱え込みました。さらに私生活においても浪費を重ね、多額の借金を抱えることとなりました。結果、霞ヶ関の本邸は差し押さえられ、競売にかけられました。

具張は負債の責任を取り、隠居して家督を息子具栄に譲り、自ら岩倉家から分家しました。しかし、家計問題はその後も続き、大正5年には債権者から訴訟を起こされる事態に発展します。

岩倉家のその後

具栄は帝室林野局の官僚となり、津藩主家出身の令嬢と結婚することで家計回復の兆しが見え始めました。しかし、具張の娘靖子の左翼活動が明るみに出たことで、再び岩倉家は激震に襲われます。靖子は治安維持法違反で逮捕され、「赤化華族」として新聞報道されたのち、自殺しました。

昭和期の女優、小桜葉子（本名岩倉具子）は、具定の五男具顕の娘にあたります。その息子が加山雄三であるため、加山雄三は岩倉具視の玄孫ということになります。

岩倉家は、明治維新という激動の時代の中枢に位置し、華族社会においても大きな存在感を示しました。しかし、その栄華の裏には、財政難や社会問題など、多くの苦難がありました。この家系は、日本の近代史を象徴する存在と言えるでしょう。

もう一度検索