島津尚久

島津尚久

島津尚久は、戦国時代の武将であり、薩摩国島津氏の分家である伊作家の10代当主、島津忠良の息子として生まれました。彼は薩摩鹿籠桜之城の城主であり、その生涯は戦乱と海賊の影に彩られています。

生涯

1531年、島津忠良の三男として生まれた尚久は、幼少の頃から武将としての道を歩み始めました。7歳で兄・貴久の軍勢に従い、市来攻めにも同行するなど、早くから戦場を経験しています。1554年の岩剣城攻めでは加治木勢として活躍、翌年の帖佐での戦いでは、次兄・忠将と共に敵を打ち破るなど、その武勇を示しました。さらに、1559年の松山城攻めでも功績をあげています。

しかし、大隅国肝付氏との戦いの後、病に倒れ、32歳という若さで亡くなりました。この戦いでは、兄・忠将を見殺しにしたと父に非難され、憤死したという説も残されています。尚久の死後、家臣の尾辻佐左衛門が殉死したと伝えられています。

尚久の子・忠長は後に宮之城を領有し、宮之城家の祖となりましたが、尚久自身は鹿籠桜之城と坊津を領地としており、宮之城を治めたことはありません。宮之城家の系図は『藤姓島津氏族尚久一流系図』として知られています。

倭寇との関わり

尚久は、薩摩の倭寇の主として、坊津を拠点とする海賊衆を束ねていたとも言われています。明の書物『籌海図編』には、倭寇の頭目である徐海の同盟者として活動した陳東という人物が、尚久の兄である島津貴久の弟で、「書記を掌せる酋」であったと記されています。この陳東は、後に徐海水軍を壊滅させた人物としても知られています。

宮之城家の系図によれば、1555年に日本の凶賊が明の沿岸を侵略した際、明の役人であった鄭舜功が豊後に来訪し、その情報を京都に伝えたとされます。翌年、九条稙通が尚久に倭寇を鎮めるよう諭し、さらに1557年には、尚久が倭寇に関する報告を京都に送ったところ、朝廷から綸旨を賜ったと記録されています。これらの記述から、尚久が倭寇に対して一定の影響力を持っていたことが伺えます。

尚久自身が倭寇の頭目であったのか、それとも幕府のスパイとして倭寇に参加し、後に討伐したのかは定かではありません。しかし、1555年に突如出現した陳東が、1556年に徐海水軍を壊滅させた後、姿を消したこと、そして1557年に尚久が倭寇に関する報告をしていることなどから、二人の間に何らかの関連性があった可能性も指摘されています。

人物像

尚久は、5尺余りの大太刀を振るい、弓術にも長けていたと伝えられています。その勇猛さと、倭寇との関わりは、謎に包まれた彼の生涯をより一層魅力的にしています。

まとめ

島津尚久は、戦国時代の武将として、また倭寇との関わりが指摘される人物として、歴史に名を刻んでいます。彼の生涯は、戦乱の世を生き抜いた武将の姿と、海賊の影が交錯する、興味深い物語を伝えてくれます。

参考文献

• - 『籌海図編』

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