島津忠紀 (重富家)

島津忠紀について

島津忠紀（しまづ ただのり）は、江戸時代中期の薩摩藩士であり、重富島津家の初代当主です。越前島津家16代当主でもあります。彼は薩摩藩主一門の中でも筆頭の家柄である重富島津家の基礎を築きました。

生い立ちと家督相続

享保19年（1734年）9月3日、島津忠紀は薩摩藩主島津吉貴の四男として、父の隠居所である磯御殿で生まれました。幼名は末川壮之助といい、母は郷田兼近の娘お幾です。生後間もなく、兄である藩主島津継豊の生母であるお須磨（名越恒渡の妹）の養子となりました。

元文2年（1737年）3月18日、父吉貴の意向により、天文3年（1534年）に戦死した越前島津家当主忠長の名跡を相続することになりました。これにより、重富家が創設され、島津姓と十文字家紋の使用を許され、1万石の領地と屋敷を与えられました。これにより、忠紀は一所持ちとなり、家格はそれまで脇の総領とされていた加治木島津家よりも上位となりました。

家格の確立と藩政への関与

元文3年（1738年）1月、藩内に一門家の家格が設けられ、忠紀の重富家は一門筆頭とされました。元文5年（1739年）3月2日、実兄である垂水島津貴儔の加冠により元服し、島津周防忠紀と名乗るようになりました。

延享2年（1745年）3月には、種子島久芳の元服の際に烏帽子親を務めました。宝暦元年（1751年）9月15日には、藩主島津重年の帰国御礼使者として江戸に出府しています。

なお、一門家成立まで、垂水島津家当主の貴儔が筆頭扱いであり、藩政にも参与していました。そのため、宝暦6年（1756年）の『松平又三郎家中分限帳』では、忠紀は貴儔の下座に記載されています。

死去とその後

明和3年（1766年）6月5日、島津忠紀は33歳で死去しました。家督は嫡男の壮之助（忠救）が相続しました。

琉球国王との交流

国立歴史民俗博物館所蔵の越前島津家文書には、「島津周防」宛の琉球王尚穆（在位：1752年 - 1794年）の書状が現存しており、忠紀または息子の忠救が琉球国王と交流を持っていたことがわかります。この書状は、当時の薩摩藩と琉球王府との関係を考察する上で重要な資料となっています。

まとめ

島津忠紀は、重富島津家の初代当主として、その後の家系の繁栄の基礎を築きました。また、藩政にも関与し、琉球国王との交流もあったことが伺えます。彼の生涯は、江戸時代中期における薩摩藩の社会構造や対外関係を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考資料

林匡「島津氏一門家の成立--越前(重富)島津家を中心に」
国立歴史民俗博物館 歴史系総合誌「歴博」第194号 「越前島津家文書」に伝わる琉球国王の書状

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