重富島津家

重富島津家について

重富島津家（しげとみしまづけ）は、島津氏の分家であり、江戸時代には薩摩藩の一門家として、大隅国重富を領していました。明治維新後には士族となり、その後華族の男爵家となりました。ここでは、その歴史と歴代当主について詳しく解説します。

歴史

重富島津家の始まりは、元文2年（1737年）に島津継豊が弟の忠紀に、かつて存在した越前島津家の系図を与え、その再興という形で分家させたことに遡ります。越前島津家は、島津本宗家の初代・島津忠久の子である忠綱が起源であり、忠行が播磨国下揖保の地頭に任じられたことから始まりました。しかし、天文3年（1534年）に忠長の代で赤松氏と共に滅亡しています。

忠紀は、大隅国姶良郡脇元（現在の鹿児島県姶良市）を領地としましたが、越前島津家の領地にちなんで、この地を重富と改称し、重富島津家を称するようになりました。重富島津家は、島津家の一門の中でも筆頭の家格を誇り、1万4700石という高い家禄を与えられていました。

幕末期には、島津本宗家から重富島津家に養子に入った忠教が、宗家に戻って久光となり、薩摩藩主となった息子の茂久の後見人となりました。維新後には、久光と忠義の両名がそれぞれ公爵に叙せられています。一方、重富島津家は、久光の三男である珍彦（忠義の弟）が継承し、明治維新後に士族に列せられました。

明治17年（1884年）に華族制度が五爵制となった際、当初の計画では旧万石以上の陪臣も男爵の対象とされていましたが、最終的な制度では対象外となり、重富島津家は一時的に士族のままでした。しかし、明治22年（1889年）に島津忠義公爵が、弟である珍彦の叙爵を宮内省に請願しました。この請願書では、重富島津家の由緒、珍彦の維新への貢献、そして十分な財産を有することを主張しました。宮内省は、旧大名一門士族の叙爵には、華族戸主の血族であること、維新前後の功労があること、華族の地位を維持できる財産があること、の3つの要件を満たす必要があると判断し、珍彦が全てを満たしているとして男爵を授けるべきだと結論付けました。その結果、明治天皇の裁可を得て、同年3月2日に珍彦は男爵に叙せられました。

珍彦は、鹿児島高等中学造士館長を務めたほか、貴族院の男爵議員にも選出され、活躍しました。3代男爵の忠彦の時代には、重富島津男爵家の邸宅は東京市牛込区市谷仲之町にありました。忠彦もまた貴族院の男爵議員を務め、戦後には参議院議員にも当選、昭和44年には勲二等旭日重光章を授与されました。

歴代当主

1. 島津忠紀
父：島津吉貴（島津本宗家）
子：島津忠救（2代）
2. 島津忠救
父：島津忠紀
子：島津忠貫（3代）、島津久倫（島津徳之助家祖）、入来院定経（入来院氏本家）、町田久昶（町田勘解由家）
3. 島津忠貫
父：島津忠救
子：島津忠公（4代、養子、島津本宗家斉宣の子）
4. 島津忠公
父：島津忠貫（養父）、島津斉宣（実父、島津本宗家）
子：島津忠教（5代、養子、島津本宗家斉興の子）
5. 島津忠教
父：島津忠公（養父）、島津斉興（実父、島津本宗家）
子：島津茂久（島津本宗家）、島津久治（宮之城島津家）、島津忠鑑（6代）、島津忠欽（今和泉島津家）
6. 島津忠鑑
* 父：島津忠教

重富島津家は、その歴史の中で多くの重要な人物を輩出し、薩摩藩、そして日本の近代化に大きく貢献しました。

もう一度検索