嵐徳三郎 (6代目)

六代目 嵐 徳三郎（ろくだいめ あらし とくさぶろう）

六代目嵐徳三郎は、明治16年（1883年）3月24日に大阪で生まれた歌舞伎役者、そして映画俳優です。本名は小林徳太郎。

生い立ちと歌舞伎界へ

父は文楽の人形遣いである初代桐竹紋十郎、母は三代目嵐徳三郎（三代目嵐璃寛）の孫娘という歌舞伎の名門の家に生まれました。幼少期は、母が経営する京都の旅館「葉村屋」で過ごしました。1889年、7歳で五代目嵐璃寛に入門し、大阪角座で「嵐徳太郎」の名で初舞台を踏みました。

1896年には十四歳で四代目嵐和三郎を襲名し、女形として舞台に立ち続けました。1923年には東京の宮戸座で「大衆歌舞伎」を掲げ一座を旗揚げしましたが、関西劇壇の名門であった嵐家も、この頃には斜陽の一門となっていました。翌年、東京から大阪に戻り、片岡仁左衛門を特別出演として迎え、青年歌舞伎の公演を始めました。この時、甥の嵐徳太郎を「嵐和歌大夫」と名付け、一座に加えています。この一座には片岡千栄蔵（後の片岡千恵蔵）も参加していました。

映画界への転身

1927年、甥の嵐和歌大夫が巡業先から失踪し、牧野省三のマキノプロに入社。1929年、大阪八千代座で六代目嵐徳三郎を襲名。甥の嵐寛寿郎が映画界で成功したことに刺激を受け、自身も映画界への転身を決意します。

1930年、松竹太秦撮影所に入社。同年、広瀬五郎監督の『長兵衛と権八』で映画デビューを果たしました。その後、阪東妻三郎プロダクションに移籍。1931年には東亜キネマ京都撮影所に移籍し、尾上菊太郎主演の映画に出演しました。寛寿郎が第二次嵐寛寿郎プロダクションを設立すると、徳三郎もこれに参加し、『鞍馬天狗シリーズ』や『むっつり右門シリーズ』などの時代劇で脇役として活躍しました。1936年からは新興キネマ京都撮影所作品にも出演。寛寿郎が日活に移籍した後も、新興キネマに留まりました。1941年の映画『芸道一代男』では、明治歌舞伎の時代考証を担当しました。

1942年、新興キネマが大日本映画製作（大映）に合併すると、大映京都撮影所に継続入社し、戦後も1952年まで映画界で活躍しました。その一方で、小芝居の座頭も務めていました。

人物像とエピソード

六代目嵐徳三郎は、撮影所では甥の嵐寛寿郎が「葉村屋」と呼ばれたのに対し、「大葉村屋」と呼ばれていました。甥の嵐寛寿郎によると、「日露戦争の勇士で、大道具方とトンカチを持って立ち回るような人物」であったとのことです。並木鏡太郎監督によると、「まことにやかましき人」で、撮影現場では常に賑やかな存在でした。年齢を偽って嵐寛寿郎の「義兄」と名乗っていたため、文献によっては混乱が見られることもあります。また、弟子には嵐冠十郎がいます。

主なフィルモグラフィー

長兵衛と権八（1930年） - 主演
大岡越前と天一坊（1930年） - 主演・大岡越前守役
御場段切れ異変（1931年） - 香具師親分伝法役
清水次郎長（1931年） - 関所役人浮田弥十郎役
小笠原壱岐守（1932年） - 山内容堂役
天狗廻状（1932年） - 近藤勇役
月形半平太（1935年）
雪之丞変化（1935年 - 1936年）
蒙古襲来 敵国降伏（1937年） - 僧日蓮役
残菊物語（1939年）
芸道一代男（1941年） - 歌舞伎考証
江戸の紅葵（1941年）
かくて神風は吹く（1944年） - 池上宗仲役
乞食大将（1952年）- 遺作

死去

1955年（昭和30年）11月8日、72歳で死去しました。

参考文献

『聞書アラカン一代 鞍馬天狗のおじさんは』、竹中労、白川書院、1976年11月
『無声映画俳優名鑑』、無声映画鑑賞会編、マツダ映画社監修、アーバン・コネクションズ、2005年

外部リンク

Tokusaburo Arashi - IMDb（英語）
嵐徳三郎 - 日本映画データベース
* 嵐徳三郎 - allcinema

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