巨勢猿

巨勢猿の生涯と業績

巨勢猿（こせのさる）は、古墳時代から飛鳥時代にかけて重要な役割を果たした日本の豪族であり、氏は許勢、名は猨とも表記されます。彼の姓は「臣」とされており、歴史上の記録においてもその存在が明らかにされています。

経歴の概略

文献『日本書紀』の巻第19、21、22や『聖徳太子伝暦』に基づくと、巨勢猿は欽明天皇31年（570年）に越国（現在の福井県）に漂着し、同年の7月には高句麗からの使節を迎えるために近江国まで移動しました。この際、巨勢猿は吉士赤鳩（きしのあかはと）と共に、難波津に停泊していた船を佐々波山（現在の逢坂山）に引き上げました。彼は使節を近江の北の山、具体的には琵琶湖北岸に迎え入れたのです。

さらに、崇峻天皇4年（591年）の8月には、天皇が任那の復興を命じる詔を発しました。この詔に従い、同年11月には巨勢猿が大将軍に任じられ、紀男麻呂や大伴囓、葛城烏奈良といった他の豪族と共に2万あまりの軍を引率し、筑紫国（現在の福岡県）に派遣されたとされています。ただし、彼は朝鮮半島には渡海せず、推古天皇3年（595年）の日には筑紫を引き上げたとの記録があります。

また、谷川士清の『日本書紀通証』に記されている別の文献によると、若い頃に彼は船辰爾の業を受け、その後百済博士の王柳貴に従ったという記録もあります。これらの事跡から、巨勢猿は当時の国際情勢においても重要な立場を占めていたことが伺えます。

文化と影響

巨勢猿の時代においては、中国や朝鮮半島との交流が頻繁に行われており、この豪族もその一翼を担っていました。特に高句麗との接触が影響を与え、巨勢猿自身も朝鮮半島の文化や技術を学び、日本に持ち帰る役割を果たしていたと考えられます。彼の豪族としての影響力は、単なる軍事行動にとどまらず、文化や経済面にも波及していたのです。

参考文献

• - 『日本書紀』(三)・（四）、岩波文庫、1994年 - 1995年
• - 『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
• - 『日本古代氏族人名辞典』坂本太郎・平野邦雄監修、吉川弘文館、1990年
• - 『日本古代氏族事典』【新装版】』佐伯有清：編、雄山閣、2015年

彼の業績を知ることは、古代日本の社会や国際関係について理解を深める手助けとなるでしょう。

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