常栄寺 (山口市)

常栄寺：雪舟庭が織りなす歴史と美の空間

常栄寺は、山口県山口市に位置する臨済宗東福寺派の寺院であり、香山を山号とします。特に有名なのは、雪舟等楊によって作庭されたと伝えられる「常栄寺庭園」、通称「雪舟庭」です。この庭園は、その優れた景観から国の史跡および名勝に指定されています。

歴史

常栄寺は、もともと安芸国吉田（現在の広島県安芸高田市）にありました。永禄6年（1563年）に毛利元就が、急逝した息子・隆元の菩提を弔うために竺雲恵心を開山として創建されました。隆元の死は朝廷にも伝わり、翌年には正親町天皇から勅額が贈られました。関ヶ原の戦いの後、毛利氏が長州藩に移封されると、山口にあった国清寺を接収し、常栄寺としました。しかし、文久3年（1863年）に長州藩が萩城から山口政事堂に移転する際、萩にあった洞春寺（毛利元就の菩提寺）が移され、常栄寺は隆元夫人である尾崎局（妙寿大姉）の菩提寺であった妙寿寺に移されました。現在見られる建物は、大正時代の火災後に昭和6年（1931年）に再建されたものです。

昭和17年（1942年）には、関雄峰によって常栄寺で僧堂が開かれました。現在地は、元々大内氏が大内政弘の別邸跡に創建した妙喜寺があった場所です。大内政弘は、当時山口に滞在していた雪舟等楊に庭園の造営を依頼し、雪舟は寺の北側の後庭を造営したと伝えられています。これが、今日知られる「雪舟庭」です。大内氏の没落後、毛利氏はここを山口出身の尾崎局の菩提寺とし、寺名を妙寿寺と改めました。その後、常栄寺の移転に伴い、再度寺名が変更されました。庭園は、この間もそのまま維持され続けています。

雪舟庭

雪舟が造営した庭園は、枯山水を用いた池泉回遊式庭園です。寺に面する南側を除く三方を林地で囲んだ小谷地に築造されており、前面には心字池、東北には枯滝が設けられています。独特な立石の手法は、室町時代の庭園の姿を今日に伝えています。

境内

境内には、昭和8年に再建された本堂をはじめ、地蔵堂、茶堂、山門、鐘楼門などがあります。雪舟庭には、池泉の他に聴松軒、潜龍池、弁天池、四明池、龍門之滝、書院跡、迎月亭跡、毘沙門堂、弘法大師堂などがあります。また、昭和43年に重森三玲によって作庭された南溟庭や、無隠（前庭）も見どころです。

明治天皇が山口市に行幸された際（明治18年7月）に宿泊された「明治天皇宿泊の間」は、昭和42年（1967年）に常栄寺に移築され、現存しています。

文化財

常栄寺は、文化財も豊富です。特に、雲谷等益による「絹本著色雪舟等楊像」と、雲谷等顔による「絹本著色惟松円融像」は、国の重要文化財に指定されています。

アクセス

• - JR山口線宮野駅より徒歩15分
• - JR山口線山口駅より車で10分

周辺情報

常栄寺の周辺には、山口県護国神社、山口県立大学、豊榮神社・野田神社、山口市菜香亭、雲谷庵跡、瑠璃光寺、洞春寺、のむら美術館などの観光スポットがあります。

常栄寺は、その歴史的背景と美しい庭園によって、訪れる人々に深い感銘を与える場所です。雪舟庭の静寂の中で、日本の美意識と歴史を感じてみてはいかがでしょうか。

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