平井経治

平井経治：肥前国の勇将、その生涯

平井経治（ひらい つねはる）は、生没年不詳ながら、戦国時代から安土桃山時代にかけて肥前国で活躍した武将です。肥前国の豪族である平井氏の当主であり、官位は治部大輔、権大夫を称しました。『北肥戦誌（九州治乱記）』では、「当代無双の勇将」と評されるほどの武勇の持ち主でした。

有馬氏との関係

肥前平井氏は、武藤氏の支流であり、有馬氏の有馬晴純は、経治を娘婿として迎え、杵島郡の数千町を与えてその守りを任せていました。天文10年（1541年）には、多久宗時が少弐冬尚から有馬晴純に寝返ったことをきっかけに、晴純が千葉喜胤、さらに少弐氏・龍造寺氏を攻めようとした際、経治はその先陣を務めました。しかし、この時は千葉氏が東西に分かれていたものの、協調体制を敷いたため、有馬勢は戦乱前に退いています。

龍造寺氏との戦い

永禄5年（1562年）、大友氏が有馬氏に対し、龍造寺隆信によって滅ぼされた少弐氏の再興への協力を打診します。有馬晴純はこれを受け入れ、隆信討伐の軍を起こしましたが、逆に隆信の反撃を受け、経治と塚崎城の後藤貴明に助勢を求めます。またこの時、龍造寺勢に居城を落とされた多久宗利も経治を頼りました。隆信は、経治を攻めるべく、納富信景・鍋島信昌（後の鍋島直茂）に2,000の兵を与えて進軍させます。これに対し、経治は居城である須古城（高城、高岳城とも呼ばれる）から出陣し、龍造寺勢を打ち破りました。さらに翌永禄6年（1563年）8月には、後藤貴明が経治の領地に侵攻してきた際も、これを撃退しました。

しかし、永禄7年（1564年）2月、龍造寺隆信が再び経治に戦いを挑み、経治は城へ退却せざるを得なくなります。しかし、須古城は堅城であり、攻めるのが難しいと判断した隆信は和睦を提案します。経治もこれを受け入れ、弟の平井直秀に隆信の養女を娶らせることで和睦が成立しました。

須古城の陥落とその後

天正2年（1574年）、隆信は経治がまだ反心を持っているとして、討伐を決意します。経治は弟の直秀と共に数日持ちこたえましたが、徐々に押され須古城に退却します。鍋島信昌は、直秀を説得して平井家の家臣を寝返らせ、須古城を孤立させます。経治は藤津郡の吉田へと落ち延びますが、10月には叔父の新宗吟と共に直秀を攻め滅ぼし、須古城を奪還します。これに対し、隆信は再び討伐軍を送り、一月余りの激戦の末、経治は敗れ、須古城は落城しました。

軍記物である『肥陽軍記』では、この時、経治は切腹して果てた、または落ち延びる際に流れ矢に当たって死んだとされていますが、『九州治乱記』はこれらの記述を誤りとしています。同書によれば、経治は切腹を試みたものの家臣に止められ、城を落ち延びて後藤貴明を頼り、その後、上ノ城（上戸城とも）に入ったとされています。しかし、その後の経治の消息は不明です。

まとめ

平井経治は、肥前国において、その武勇と知略で名を馳せた武将でした。有馬氏との関係、龍造寺氏との激しい戦いを通じて、その生涯は波乱に満ちたものでした。その後の消息は不明ですが、後世に語り継がれる勇将として、その名は歴史に刻まれています。

参考文献

『北肥戦誌（九州治乱記）』（青潮社刊）
『日本合戦騒動叢書5 肥陽軍記』 原田種眞(現代語訳)（勉誠社 1994年） ISBN 4-585-05105-8
* 『日本の武将45 龍造寺隆信』川副 博（人物往来社 、1967年）

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