平井頼母

平井頼母について

平井頼母（ひらい たのも）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、美濃国土岐郡高山城主を務めました。その生涯は、武田氏、織田氏、森氏といった戦国大名たちの興亡に翻弄され、激動の時代を生き抜いた人物です。

出自

平井氏は、甲斐源氏の武田氏の庶流にあたり、甲斐国八代郡上平井村（現在の山梨県笛吹市石和町上平井）を発祥とする一族です。頼母の父である光行は、信濃国諏訪郡境村を経て伊那郡に転じ、平井出家の系統を引くとされています。家紋は三ッ花菱・三ッ梶葉に鷹羽の打違い・三ッ柏を使用しており、平井氏の一つの支流と考えられます。

高山城主となるまで

天文21年（1552年）、美濃高山城主であった高山光俊が亡くなると、後継者がいない状態となりました。この状況を利用し、美濃国可児郡御嵩城主の小栗重則が高山城を攻めようとしました。これに対し、肥田民部からの連絡を受けた岩村城主の遠山景前は、甲斐の武田信玄に早馬を送り救援を求めました。

信玄は、平井頼母と後藤庄助を大将として、遠山氏一族や小里氏一族などの兵を高山城へ派遣しました。小栗重則も千人余りの兵で対抗しましたが、平井・後藤らの軍勢は小栗勢を破り、御嵩城を包囲して落城させ、小栗重則は自害しました。この戦いにより、御嵩城一帯は武田氏の勢力下に入りましたが、後藤庄助は討死しました。

弘治2年（1556年）、平井光行・頼母父子は、武田信玄から高山城を与えられ、城主となりました。

上村合戦と高山城の攻防

元亀元年（1570年）、武田勢が美濃恵那郡に侵攻した際、父の光行は遠山・徳川方として上村合戦に参戦しましたが、武田勢に敗れて捕虜になったと伝えられています。その後の消息は不明であり、裏切り者として処刑された可能性も指摘されています。

天正2年（1574年）、武田勝頼の軍勢が高山城を攻めた際には、頼母は700人の兵で守備しましたが、落城し逃亡しました。

織田信長との関係

天正3年（1575年）、織田信長は、武田勢が占領した岩村城からの防衛のため、高山城に森長可を派遣し、頼母は700余りの兵でこれに備えました。同年、頼母は森長可の組下として高遠城を攻めました。

天正8年（1580年）には、次女の松姫を苗木城主の遠山友政に嫁がせました。

本能寺の変後の動向

天正10年（1582年）、本能寺の変で織田信長が死去すると、頼母は遠山友政らとともに、森長可を討とうと謀議しましたが失敗に終わりました。

天正11年（1583年）、森長可の軍勢が土岐郡に侵攻してきた際、頼母は森長可に降伏し、組下となりました。高山城は修理され、森氏に明け渡されました。しかし、この降伏には異説もあり、森長可の計略によって討たれたという説も存在します。

小牧・長久手の戦いと最期

天正12年（1584年）、小牧・長久手の戦いでは、頼母は息子たちとともに出陣しましたが、十平が討死。森長可が戦死したため、高山城は徳川氏家臣の石川数正に攻められ、頼母は城と領地を失いました。

その後、豊臣秀吉と織田信雄の和睦により、高山城は森忠政が取り戻し、森氏家老の林為忠が城代となりました。

天正13年（1585年）、頼母は死去しました。墓は岐阜県恵那市明智町吉良見にあり、現在も地元の人々によって供養されています。遺品として短槍が残されています。

その後

天正19年（1591年）頃、土岐氏庶流の肥田惣右衛門は後継がいなかったため、頼母の末子の助五郎を養子に迎えました。現在も岐阜県土岐市に子孫が在住しています。

平井頼母は、戦国時代の動乱の中で、様々な勢力の間で翻弄されながらも、一領主として生き抜いた武将でした。その生涯は、当時の歴史を理解する上で重要な一例といえるでしょう。

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