平家没官領

平家没官領とは

平家没官領とは、平安時代末期に平家一門が没落・滅亡した際、朝廷によって没収された所領のことです。これらの所領は、平家一門が本家職、領家職、預所職などを有していた荘園や、平家の家人、平家方についた者の所職など、多岐にわたりました。

一般的に、その数は500か所にも及んだとされていますが、これを裏付ける確実な史料は存在していません。

没官の経緯

寿永2年（1183年）、平家が安徳天皇を奉じて都落ちすると、後白河法皇は平家追討の院宣を発し、平家一門の官職を剥奪しました。この過程で、平家一門が所有していた所領も没収されたと考えられています。

当初、没官領の一部は源義仲や源行家らに与えられましたが、義仲が法皇と対立し、行家が没落したことで、最終的に全ての平家没官領は源頼朝に与えられることになりました。

頼朝への移行

元暦元年（1184年）、朝廷から頼朝の元に「平家没官領注文」が送られました。この注文には約500か所の没官領が記載されており、頼朝没後も鎌倉幕府によって保管されました。しかし、注文に記載された全ての没官領が頼朝のものになったわけではありません。

頼朝は、自身の恩人である池禅尼の子孫に所領を返還したり、弟の義経や妹の坊門姫に所領を分け与えたりしました。また、寺社への寄進や、別の経緯で獲得した没官領も存在したとされています。

没官領の活用

頼朝は、没官領を自らの直轄領（関東御領）とし、御家人を地頭や預所として派遣して経営を行わせました。これにより、鎌倉幕府は政治的・財政的な基盤を確立することができました。

地頭制度との関係

日本史学者の川合康は、平家没官領のような内乱を契機とする敵方所領の没収が、律令制以来の没官刑と複合して、中世の地頭制度を形成したと論じています。平家没官領など、承久の乱以前に補任された地頭は「本補地頭」と呼ばれ、乱後に没収した朝廷の所領に補任された地頭は「新補地頭」と呼ばれています。

まとめ

平家没官領は、平家滅亡後の社会に大きな影響を与えました。没官領は、源頼朝による鎌倉幕府の成立を支える重要な要素となり、後の地頭制度の形成にも繋がったと言えるでしょう。

関連項目

地頭
一分地頭
関東御領
春近領

参考文献

安田元久「平家没官領」『国史大辞典 12』吉川弘文館 1991年 ISBN 978-4-642-07721-7
田中文英「平家没官領」『平安時代史事典』角川書店 1994年 ISBN 978-4-04-031700-7
義江彰夫「平家没官領」『日本史大事典 6』平凡社 1994年 ISBN 978-4-582-13106-2
高橋昌明「平家没官領」『日本歴史大事典 3』小学館 2001年 ISBN 978-4-09-523003-0
仁平義孝「平家没官領」『日本古代史事典』朝倉書店 2005年 ISBN 978-4-254-53014-8
三田武繁「地頭」『日本中世史研究事典』東京堂出版 1995年6月 ISBN 4-490-10389-1

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