平熙

平熙（へい き、生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物であり、その生涯は断片的に史書に記録されています。

咸康3年（337年）9月、鮮卑慕容部の大人である慕容皝（ぼよう こう）は、勢力拡大に伴い文武百官を整備しました。この時、平熙は宋晃（そう こう）、張泓（ちょう こう）と共に将軍に任じられ、初期の前燕を支える一員となりました。しかし、この時期の彼の具体的な活動内容については、史料が乏しく不明な点が多いのが現状です。

平熙の名が再び史書に登場するのは、光寿元年（357年）5月のことです。この時、撫軍将軍の慕容垂（ぼよう すい）、中軍将軍の慕容虔（ぼよう けん）と共に、歩兵と騎兵合わせて8万の大軍を率いて、塞北の勅勒（ちょろく）を討伐する遠征に参加しました。この戦いにおいて、平熙は勅勒を打ち破り、10万以上の兵を討ち取るという大戦果を挙げました。さらに、馬13万匹、牛や羊数十万頭を得るという目覚ましい戦果を上げ、前燕の勢力拡大に大きく貢献しました。この戦役における平熙の具体的な役割や指揮系統については詳細な記述はありませんが、慕容垂、慕容虔という重鎮と共に軍を率いたことから、彼が前燕軍において重要な地位を占めていたことが推測できます。

同年12月、平熙は新たな任務を任されることになります。皇帝慕容儁（ぼよう しゅん）の指示により、慕容皝と慕容廆（ぼよう かい）の廟を建立することになり、平熙はその工事を監督する将作大匠に任命されました。具体的には、昌黎郡と遼東郡の二郡には慕容廆の廟が、范陽郡と燕郡の二郡には慕容皝の廟がそれぞれ建設されることになり、平熙はこれらの廟の建設を監督する責任者となりました。廟の建立は、前燕の国家的な事業であり、平熙がその責任者に任命されたことは、彼に対する慕容儁の信頼の厚さを示すものと言えるでしょう。しかし、これらの廟が実際にどのような規模で、どのような意図をもって建立されたのかについては、史料が限られており、詳細を知ることはできません。

廟の建設監督以降、平熙に関する記述は史書から途絶え、その後の消息は不明です。しかし、前燕初期の軍事と国家事業の両面で重要な役割を果たした人物として、その名はわずかに歴史に刻まれています。

参考文献
『晋書』巻109、巻110
『資治通鑑』巻95、巻100
* 『十六国春秋』巻24、巻27

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