平群氏

平群氏について

平群氏（へぐりうじ）は、「平群」を氏の名とする古代豪族です。武内宿禰（たけしうちのすくね）の後裔と伝えられ、大和国平群郡平群郷（現在の奈良県生駒郡平群町）を本拠地としていました。姓は臣（おみ）、後に朝[[臣]]（あそん）を名乗りました。

概要

『日本書紀』によれば、平群氏は応神天皇の時代から軍事氏族として活躍し、履中天皇の時代には平群木菟宿禰（へぐりのつくのすくね）が国政に参画しました。葛城氏が没落した後の雄略天皇の時代には、木菟の子である真鳥（まとり）が「大臣」を歴任し、一族は全盛期を迎えました。しかし、仁賢天皇の崩御後、真鳥大臣は日本国王になろうと専横を極め、その勢力を恐れた稚鷦鷯太子（後の武烈天皇）の命を受けた大伴金村によって、真鳥とその子の鮪（しび）は誅殺されました（498年）。

この事件以降、平群氏の人物はしばらく『日本書紀』から姿を消しますが、用明天皇2年（587年）の物部氏討伐の際、将軍として神手（かみて）の名が見え、この頃までには大夫（まえつぎみ）を選任する氏族としての地位を得ていたと考えられます。天武天皇13年（684年）には八色の姓が施行され、平群氏は改めて朝[[臣]]の姓を賜りました。奈良時代には広成（ひろなり）などの官人を輩出しましたが、その後は没落しました。

平群氏と馬

平群氏は、馬の管理にも深く関わっていました。『日本書紀』武烈天皇即位前紀によると、海柘榴市（つばいち、現在の奈良県桜井市金屋）で行われた歌垣で、平群鮪が即位前の武烈天皇と争った際、鮪の父である平群真鳥が「官馬」を求めており、平群氏が海柘榴市の官馬の管理に従事していたことがわかります。また、藤原京から出土した木簡には、「日向久湯評（ひむかのくゆのこうり、後の日向国児湯郡平群郷、現在の宮崎県西都市平群）人」の「平群部美支」という人物が見え、日向国には牧が多く存在していたことから、彼も牧や馬に関わる人物だったと考えられています。

額田首

『新撰姓[[氏録]]』によれば、平群木菟の次男（『紀氏家牒』によれば額田早良宿禰（ぬかたのさらすくね））は、母の氏である額田首（ぬかたのおびと）を名乗ったとされています。平群氏を名乗らなかった理由として、平群真鳥が朝敵として討伐されたことと関連があるという説があります。額田早良宿禰の子である額田駒宿禰（ぬかたのこまのすくね）は、平群県において馬を養育し、天皇に献上したことで、馬工連（うまたくみのむらじ）の姓を賜り、馬の飼育を任されたとされます。また、駒宿禰が馬を養育した場所が生駒であると伝えられています。駒宿禰の子は馬工御樴連（うまたくみのみおしむらじ）を賜っています。

系図

（一部推定）

考証

考古学的な見地からは、平群氏の奥津城とされる平群谷古墳群（へぐりだにこふんぐん、平群町に所在）の変遷から、平群氏の台頭は6世紀中期以前には遡れないという説があります。この説に基づくと、真鳥が大臣として専横を振るったという『書紀』の記述は史実とは認められず、平群氏が蘇我氏への対抗意識から、自氏も武内宿禰の後裔であると主張するために作り上げたものだと考えられています。また、天武天皇10年（681年）の帝紀・上古諸事の記定事業に平群子首（へぐりのこびと）が参加し、『日本書紀』の編纂には平群宇志（へぐりのうし）が参加していること、持統天皇5年（691年）に「墓記（纂記）」の上進を命じられた氏族に平群氏が含まれることは、同氏の伝承成立と関わると考えられます。

ただし、平群谷古墳群の成立時期が平群木菟や平群真鳥の時代と合わないことと、彼らの存在を否定することは別の問題です。木菟や真鳥が現在の平群町以外の場所を本拠地としていた可能性も否定できません。

脚注

関連項目

平群広成
平群町
* 平隆寺 (奈良県三郷町)

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