広島逓信病院旧外来棟被爆資料室
広島市中区白島にある「広島逓信病院旧外来棟被爆資料室」は、現存する
逓信建築であり、被爆建物の一つです。元々は広島逓信病院(現在の
広島はくしま病院の前身)の外来棟として
1935年に建てられました。
1945年の原爆投下で被災しましたが、
1995年に資料室として保存・公開されることになりました。
概要
この資料室は、
鉄筋コンクリート構造2階建ての建物で、かつては広島逓信病院の外来棟として使用されていました。設計は逓信省の
山田守が担当し、
モダニズム建築を取り入れた病院として当時としては画期的なものでした。被爆後、この建物は救護活動の拠点となり、多くの負傷者が運び込まれました。
資料室は、被爆の惨状を伝えるだけでなく、当時の医療活動の様子や、建物の特徴などを学ぶことができます。通常は施錠されていますが、事前に
広島市平和推進課に連絡することで見学が可能です。また、毎年8月6日の
原爆忌には一般開放されています。
2024年11月にはリニューアルが予定されており、
広島平和記念資料館の付属展示施設となる予定です。
建物
設計者の
山田守は、ヨーロッパ視察の経験を活かし、
モダニズム建築を日本の病院建築に取り入れました。広島逓信病院は、山田が初めて手掛けた病院建築であり、その後の
東京逓信病院、大阪逓信病院のモデルとなりました。
竣工当時の特徴は以下の通りです。
鉄筋コンクリート構造で、地上2階、地下1階の一部に3階部分「日光浴室」がありました。
L字型で、南棟が外来と病棟、北側が玄関と事務所でした。
南の外来棟は、1階が診察室、2階が病室、3階が日光浴室でした。
病院としては小規模で、入院施設は12室30床でした。
南西向きに大きく開いた窓が特徴で、採光を重視した設計でした。
当時としては画期的な冷暖房設備がありました。
南側の敷地は将来の病室拡張を考慮して設計されました。
現在、玄関棟は取り壊され、外来棟のみが復旧されています。内部には、当時の手術室が再現され、被爆当時の写真や資料が展示されています。また、爆風で折れ曲がった窓枠なども展示されており、当時の被害の大きさを物語っています。
歴史
略歴
1935年(昭和10年)12月22日:病院が新築移転
1945年(昭和20年)8月6日:原爆投下により被爆
1946年(昭和21年)9月:建物復旧工事を開始
1948年(昭和23年)7月:病棟を新築
1949年(昭和24年)7月:全面復旧
1994年(平成6年):新館(現在の
広島はくしま病院)が竣工
1995年(平成7年):旧外来棟南部分を資料室として公開
2012年(平成24年):
DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選出
2018年(平成30年):
広島市に寄贈
被爆
被爆直前の状況
広島逓信病院は当時、県から救護病院に指定されていました。院長は
蜂谷道彦で、内科、耳鼻咽喉科、小児科、眼科、産婦人科、外科、歯科の診療科がありました。入院病室は14室、収容人数は36人でした。
医師や技術員は応召により不足しており、治療材料も不足していました。しかし、薬品は約2年分の備蓄があり、空襲対策として地下室を整備したり、応急処置用の水槽を設置したりしていました。
また、被爆前に患者全員に退院命令が出されたため、入院患者の犠牲者は出ませんでした。
被爆
被爆当時、病院には数名の外来患者がおり、看護婦が診察の準備をしていました。原爆の爆風により窓ガラスが吹き飛び、窓枠が変形しましたが、
鉄筋コンクリート構造のため倒壊は免れました。薬品倉庫から黒煙が上がり、周辺の火災で延焼の危険もありましたが、職員の消火活動によって1階と地下室は全焼を免れました。
病院職員48人のうち37人が死傷しましたが、病院内での即死者はいませんでした。重傷を負った
蜂谷道彦院長も病院に駆けつけ、医療活動を続けました。被爆直後から多くの負傷者が運び込まれ、市街地の医療拠点の一つとなりました。
交通アクセス
広島はくしま病院を参照してください。
参考資料
中国電気通信局『広島原爆誌』1955年8月6日
李明、石丸紀興「広島逓信診療所の建築について」『日本建築学会計画系論文集』、日本建築学会、2001年、307-314頁、doi:10.3130/aija.66.307_1、2017年5月9日閲覧。
広島原爆戦災誌 -
広島平和記念資料館平和データベース
被爆60年 ヒロシマの記憶 - RCC中国放送
関連項目
広島赤十字・原爆病院メモリアルパーク
日本郵政の博物館
沖縄郵政資料センター
明治村内郵政資料館
逓信総合博物館
山田守作品の
逓信建築で被爆建物
NTT西日本十日市ビル
旧電気試験所広島出張所
外部リンク
広島逓信病院旧外来棟の見学のご案内 - 広島市
広島逓信病院旧外来棟被爆資料室 - 日本郵政
この資料室は、原爆の悲劇を伝えるとともに、当時の医療従事者たちの奮闘を今に伝える貴重な場所です。平和学習の一環として、ぜひ訪れてみてください。