NTT西日本十日市ビル

NTT西日本十日市ビル：被爆と復興を語る建築

NTT西日本十日市ビルは、広島市中区西十日市町に位置する、NTT西日本の所有する建築物です。この建物は、現存する被爆建造物であり、同時に逓信建築としての歴史も持っています。広瀬橋の東詰に位置し、2つの棟から構成されています。そのうち、相生通りに面した1棟が被爆建物であり、設計は建築家・山田守によるものです。鉄筋コンクリート構造の3階建てで、相生通りを挟んだ南側には、広島市が設置した原爆被災説明板があります。

建物の概要

北側の2棟には電話交換機が収容されており、NTT西日本の関連企業支店やNTT西日本-中国の部署も入っています。かつては1棟1階に「広島西営業所」がありましたが、2001年以降のNTT西日本再編に伴い閉鎖されました。

歴史

被爆前

被爆建物である1棟は、1937年（昭和12年）に竣工しました。1939年（昭和14年）には、広島市初の自動交換局として「広島中央電話局西分局」が開局しました。

太平洋戦争中には、この西分局のほかに、袋町の中央局、三篠本町の電気試験所広島出張所（西分局横川従局）、福屋百貨店（福屋八丁堀本店）地下の電話処置局が設置されました。戦争末期には、防空警報伝達機関として重要な役割を担っていました。燈火規制のため窓には暗幕が張られ、重要な機器が設置された場所には防爆壁や厚板の扉が設けられました。また、建物周囲約30mは火災防止のため建物疎開が行われました。

電話局の職員は、疎開や男性職員の応召によって不足しており、その不足を女子挺身隊や動員学徒で補っていました。西分室の職員構成は、局課長主事1人（女性）、判任官4人、雇員1人、挺身隊1人、学徒57人であり、男性の割合はわずか1.5%でした。挺身隊には職員と同等の権限が与えられ、動員学徒は進徳高等学校（現・進徳女子高等学校）から派遣され、日給50銭が支給されていました。

被爆後

1945年（昭和20年）8月6日、深夜に空襲警報が出ましたが、早朝に解除され、職員は通常通り出勤しました。当時の出勤状況は、養成教官3人、事務員1人、挺身隊1人、学徒22人、合計27人でした。被爆直前の午前8時15分には、教官や事務員は出勤して仕事の準備をしていましたが、授業が8時半からだったため、学徒は半分程度しか来ていませんでした。

午前8時15分、広島市への原子爆弾投下により、建物は爆心地から約1.08kmの地点で被爆しました。窓は対空爆補強が施されていましたが、2階は窓枠ごと吹き飛ばされ、補強壁も破損しました。3階は1/4ほどが開いており、同様に吹き飛ばされて室内の補強壁が破壊されました。事務机の一つが真っ二つに割れるほどの被害でした。建物自体は火災を免れ、3階の事務室と養成室に負傷者が集中し、女性3人が亡くなりました。また、機器の大半が破損しました。

中央局と横川従局は壊滅的な被害を受けたため、8月8日からこの場所に措置局が置かれ、電話局の拠点となりました。8月12日には中央局が復旧したため、措置局は移転しました。8月15日の終戦日には、中央局で電話の交換業務が再開されました。西局自体は、設備端子の半数が再利用可能と判明したため、翌1946年（昭和21年）1月から改修工事が行われ、同年8月に完全に再開しました。

その後、北側に2棟が建設され、交換機はそちらに移されました。1981年（昭和56年）には、1棟が事務所棟として全面改装され、現在の外観になりました。その後、営業所は閉鎖されました。

アクセス

広島電鉄本線 十日市町電停下車、徒歩7分
広電バス7号線 「西十日市町」下車、すぐ（平日の朝のみ、1日2.5往復のみ停車）

参考資料

中国電気通信局『広島原爆誌』（原著1955年8月6日）
広島市『広島原爆戦災誌』（PDF）（改良版）、2005年（原著1971年）。
NTT西日本十日市ビル（旧広島中央電話局西分局 ）（「電話局の写真館」内）

関連項目

NTTクレド
逓信省関連(山田守作品)の被爆建物
広島逓信病院旧外来棟被爆資料室
旧電気試験所広島出張所 - 同じ年に竣工している。

外部リンク

原爆被災説明板 - 広島市

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