広橋兼宣

広橋兼宣：室町期の公卿、その栄光と騒動

広橋兼宣（ひろはし かねのぶ）は、南北朝時代から室町時代前期にかけての公卿であり、広橋家7代当主として知られています。権大納言・広橋仲光の子として生まれ、最終的には従一位・大納言にまで昇り、贈内大臣の位を追贈されました。

異例の出世

広橋兼宣は、3歳で学問料を与えられ、5歳で文章得業生となるなど、幼少の頃からその才能を発揮しました。これは、文筆を業とした広橋家の出身であること、そして後円融天皇の生母である崇賢門院の義理の甥にあたるという特別な背景があったためです。元服後も順調に昇進を重ね、応永元年（1394年）には蔵人頭に任ぜられ、その後も右大弁、左大弁、造東大寺長官などを歴任しました。応永7年（1400年）には参議に任ぜられ、公卿としての地位を確立しました。

武家伝奏としての活躍

応永8年（1401年）には権中納言となり、武家伝奏に任ぜられます。武家伝奏とは、朝廷と室町幕府との間を取り持つ重要な役割を担う役職であり、兼宣は幕府との交渉に奔走しました。その様子は、彼自身の日記である『兼宣公記』に詳しく記録されています。また、娘は後花園天皇の乳母となるなど、朝廷内でも一定の影響力を持っていました。

広橋亭裏築地撤去騒動

兼宣の名を歴史に残したのは、晩年に起こした「広橋亭裏築地撤去騒動」でした。当時、公家社会では家格を越えた出世が問題視されており、特に日野流や勧修寺流といった新興の名家が勢力を伸ばしていました。兼宣は同じ日野流の日野資教と激しく対立し、准大臣の地位を巡って争いました。そして、准大臣に任ぜられた直後、邸宅に裏築地を構築したことが騒動の発端となります。

裏築地とは、邸宅の築地の外側に二重に構築された築地のことで、天皇や院、摂関家などの限られた身分の者にしか許されていませんでした。従一位である兼宣が准大臣の宣下を受けたとはいえ、裏築地の構築は身分不相応であるとして、上級家格の公卿を中心に批判の声が高まりました。特に、正親町三条公雅の名前を騙ったことが発覚し、公雅自身が激怒したことで、事態はさらに悪化しました。幕府の介入もあり、最終的に兼宣は自ら裏築地を撤去することになりました。

この騒動は、当時の公家社会における身分秩序の厳格さを示す出来事として、後世に語り継がれています。兼宣自身は軽率な行動であったと批判されていますが、同時に、彼の行動は、当時の公家社会の矛盾や権力闘争を浮き彫りにするものでもありました。

その後

広橋兼宣と日野資教の争いは、思わぬ形で終わりを迎えます。資教の子・有光が禁闕の変によって処刑され、代わって日野家の継承を許された兼宣の子・兼郷も足利義教の不興を買って所領を奪われ、一時断絶に追い込まれることになったのです。広橋兼宣は、応永32年（1425年）に出家し、その生涯を閉じました。没後、内大臣を贈官されています。

系譜

父：広橋仲光
母：不詳
妻：不詳
子女：多数（上記参照）

広橋兼宣は、その華麗な出世と晩年の騒動によって、室町時代の公家社会を象徴する人物の一人として記憶されています。

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