広済寺 (日置市)

広済寺の歴史と名声

広済寺（こうさいじ）、または「廣済寺」として知られるこの寺院は、かつて薩摩国日置郡伊集院に位置していました。臨済宗に属し、山号は「泰定山」とされ、格式の高い寺院として知られていました。ここでは、広済寺の歴史的背景、成り立ち、繁栄、そして廃仏毀釈後の変遷について詳しく紹介します。

沿革の始まり

広済寺の創建は、貞治2年（1363年）に伊集院忠国の子・南仲景周によってなされました。南仲は京都の南禅寺で修行を積んだ後、故郷に戻り、「古城山円勝寺」を建立し、その開山に就任しました。彼は、師である南禅寺の住職・蒙山智明に円勝寺を願い出て、その後、円勝寺は「泰定山広済寺」と改名されました。これに伴い、広済寺は南禅寺の直末寺として高い格を保ち、多くの学僧が集まる学問寺としての名声を得ることになります。

南仲が新たな寺地を求めた際、自然災害によって広い平地が生まれたことから、応永5年（1398年）に寺は古城から新たな場所に移転され、さらなる発展を見ました。本尊には釈迦如来坐像が配され、脇侍として普賢菩薩と文殊菩薩が祀られています。

繁栄の時代

寺院は、様々な住職の下で繁栄を続けました。特に第7代住職の雪岑津興は、博識の学僧としてはっきりとした名声を確立し、寺の格を南禅寺の官寺に押し上げました。彼は詩文にも優れ、薩摩地域の僧録としての役割を果たし、多くの育成された僧侶たちが広済寺から巣立っていきました。

さらに、この頃には寺領730石という広大なものを抱え、さまざまな学問活動が行われ、地域文化の中心となっていったのです。広済寺で開かれた詩歌の会には、島津義久も参加しており、彼が詩を作る姿が記録されています。

焼失と復興の試練

しかし、鶴見寺の焼失という厳しい試練も待っていました。慶長18年（1613年）に大火が発生し、境内のすべての堂宇や宝物が焼失してしまいます。この火事以降、広済寺は約42年間も住職不在の荒廃した状態が続きました。

再興の兆しは、正保2年（1645年）に報恩寺の住職が兼任し始めたことで見えてきました。明暦元年（1655年）には多宝寺の住職によって伽藍が復興され、やがて寺の運営が安定を取り戻しました。その後も様々な住職たちの努力により、寺院は少しずつ再生を果たしていきます。

廃仏毀釈とその後

明治2年（1869年）、廃仏毀釈の影響で広済寺は廃寺となり、その跡地は墓地へと転用されました。西南戦争時には、この地で多くの薩摩の志士が集団自決を行ったとの記録も残ります。現在、跡地には鹿児島県立伊集院高等学校が建設され、入口には仁王像が設置されています。

一方で、広済寺の名残は未だに地域の人々に愛されており、「コセ寺」という愛称でも親しまれています。地元の伝承や文化、そして熊野神社が今もなお、人々の心に残っています。広済寺の歴史を通じて、知識や信仰がどれほど深い意味を持っていたかがうかがえます。

このように、広済寺はただの寺院ではなく、地域の学問、信仰、文化が交差する重要な場所であり、その影響は現在も続いているのです。

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