延安市

延安市について

延安市は、中国陝西省北部に位置する地級市で、黄土高原地帯にあります。この地は、1937年から1947年まで中国共産党中央委員会が置かれ、毛沢東が党内での主導権を確立した場所として、中国革命における重要な聖地とされています。

地理

延安市は、黄土高原に位置し、大陸性気候のため四季がはっきりとしていますが、乾燥しているのが特徴です。黄河本流にある最大級の滝、壷口瀑布が近くにあります。

歴史

古代から秦代まで

延安の地は、古くから異民族による国家が存在していました。周代には「鬼方」と呼ばれる民族がこの地を支配していたとされ、春秋時代には白狄と呼ばれる遊牧民族の支配下となりました。戦国時代には秦と魏の抗争の舞台となり、最終的に秦がこの地を領有し、高奴県を設置しました。

漢代から隋代

秦による中国統一後も、高奴県は咸陽や長安の北の防衛拠点として重要視されました。漢代には、この地で石油が産出していたことが『漢書』に記録されており、中国における石油に関する最古の記述とされています。その後、554年に西魏によって延州が設置され、隋代には延安郡と改称されました。

北宋から清代

北宋時代には延安府が設置されました。明末には、農民反乱の拠点となり、高迎祥や李自成、張献忠などがこの地を拠点に反明活動を展開しました。清朝は明朝の制度を踏襲し、延安府の下に3州16県を管轄しました。雍正年間には鄜州と綏徳州が直隷州に昇格し、乾隆年間には定辺県と靖辺県が管轄下に加わりました。清代には、農民反乱や中国初の油田開発が行われた地でもあります。

中華民国時代

中華民国が成立すると、延安地域には楡林道が設置されましたが、後に道制が廃止され、各県は省直轄となりました。1935年には行政督察区制度が施行され、北部が第2、南部が第3行政督察区の管轄となりました。

革命の拠点として

延安は、中国共産党にとって重要な拠点となりました。長征の最終地点である呉旗鎮に到達後、1937年から1947年まで中国共産党中央委員会が置かれ、毛沢東はこの地で抗日戦線の指揮を執りました。また、『新民主主義論』、『持久戦論』、『文芸講話』、『連合政府論』など、毛沢東の主要著作がこの地で執筆され、延安は革命の聖地として知られるようになりました。1926年には中国共産党の組織が設置され、1930年代には反蔣介石闘争を経て陝甘辺区と陝北辺区が設立されました。1936年には毛沢東率いる中国工農紅軍が延安に入城し、1937年には陝甘寧辺区政府が成立しました。抗日軍政大学や魯迅芸術学院など、思想面の強化を目的とした教育機関も設置されました。また、共産党は「整風運動」と呼ばれる思想統制運動を行いました。1940年には延安新華広播電台（現在の中国国際放送）が設置され、1942年には行政督察専署が設置されました。1946年には国民政府軍による空爆を受け、1949年には陝北行政区が設置されました。

中華人民共和国時代

1950年、陝北行政公署が廃止され、延安分区行政督察専署が新設されました。1969年には延安地区と改称され、1996年に地級市の延安市となりました。その際、県級市の延安市は宝塔区に改編されました。近年は、石炭、石油、天然ガスなどの地下資源の開発が進み、都市化が急速に進んでいますが、革命時代の面影は薄れてきています。

行政区画

現在、延安市は2つの市轄区、1つの県級市、10の県を管轄しています。

市轄区：宝塔区、安塞区
県級市：子長市
県：延長県、延川県、志丹県、呉起県、甘泉県、富県、黄陵県、洛川県、黄竜県、宜川県

年表

延安市は数々の変遷を経て現在に至っています。以下に主な年表を示します。

1949年10月1日: 中華人民共和国陝西省陝北行政区が成立。
1950年5月2日: 延安県などが延安専区に編入。
1956年3月: 黄竜県の一部が渭南専区澄城県に編入。
1956年9月11日: 綏徳専区子長県・延川県を編入。
1958年11月21日: 大幅な行政区画の整理が行われる。
1961年8月16日: 複数の県が分立・発足。
1969年10月: 延安専区が延安地区に改称。
1972年2月7日: 延安県の一部が分立し、延安市が発足。
1996年11月5日: 延安地区が地級市の延安市に昇格。
2005年10月17日: 呉旗県が呉起県に改称。
2016年6月8日 : 安塞県が区制施行し、安塞区となる。
2019年7月12日 : 子長県が市制施行し、子長市となる。

交通

延安市には、延安南泥湾空港があり、北京、西安、上海、広州、重慶と空路で結ばれています。
また、鉄道では神延線、西延線、包西線が利用可能です。
道路はG210国道、G309国道が通っています。

観光

延安市には、革命関連の観光地として延安革命記念館、中共中央書記処旧跡、毛沢東旧居などがあります。
歴史・文化関連の観光地としては、黄帝陵、宝塔山、延安民族文化村、洛川民族博物館などがあります。

延安を舞台にした作品

池谷薫監督のドキュメンタリー映画『延安の娘』は、文化大革命時の下放政策が残した悲劇を描いています。

脚注

[1] （出典情報は割愛）

関連項目

長征
八路軍
延安報告
延安 (小惑星)

外部リンク

延安市人民政府（公式サイトへのリンクは割愛）

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