後藤基綱

後藤基綱：鎌倉幕府を支えた文官と歌人

後藤基綱（ごとう もとつな）は、鎌倉時代前期に活躍した御家人であり、歌人としても名を残しています。武士でありながら、実務官僚として鎌倉幕府を支えた人物です。

生涯

養和元年（1181年）、藤原北家、藤原秀郷の血を引く京武者、後藤基清の子として生まれました。基綱は、承久の乱において軍奉行を務めたと推測されています。この乱では、後鳥羽上皇に味方した父・基清を、幕府の命により自ら斬首するという悲劇を経験しました。この出来事は、彼の人生に大きな影響を与えたと考えられます。

嘉禄元年（1225年）に評定衆が設置されると、その一員に選ばれ、恩沢奉行や地奉行を歴任しました。後藤基綱が残した記録は、『吾妻鏡』に多く引用されており、当時の政治や社会情勢を知る上で重要な資料となっています。

また、4代将軍・藤原頼経の側近として、恩賞奉行を務めていましたが、寛元4年（1246年）の宮騒動によって評定衆を解任され、頼経と共に京へ送られました。しかし、6年後には引付衆として復帰を果たします。この復帰は、72歳という高齢であったにもかかわらず、後藤氏の名誉回復の意味合いが強かったと推測されます。

康元元年（1256年）に生涯を閉じましたが、武士としてよりも、文官として、その能力を発揮し、鎌倉幕府の運営に貢献しました。

歌人としての才能

後藤基綱は、歌人としても高い評価を受けています。『新勅撰和歌集』には2首、『続後撰集』には3首、『続古今集』には1首、『続拾遺集』には1首、『新続古今集』には1首、合計8首もの和歌が勅撰和歌集に選ばれています。これは、当時の歌壇において、彼の歌人としての才能が認められていたことを示しています。また、『十訓抄』の著者であるという説も存在しますが、確証はありません。

後藤氏のその後

子である基政は、引付衆から六波羅評定衆となり、以降、後藤氏は六波羅評定衆を世襲する家柄となりました。これは、基綱の功績が子孫に受け継がれ、鎌倉幕府において重要な役割を果たし続けたことを示しています。

後藤基綱は、鎌倉時代を代表する文官であり、歌人でした。激動の時代を生きながらも、その才能を発揮し、歴史に名を刻んだ人物と言えるでしょう。

参考資料

五味文彦『増補 吾妻鏡の方法―事実と神話にみる中世』（吉川弘文館、2000年）
細川重男『鎌倉政権得宗専制論』（吉川弘文館、2000年）

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