後藤宗印

後藤宗印（ごとう そういん）は、1545年頃に生まれ、1627年に亡くなった長崎の町年寄です。彼はキリシタンであり、朱印船貿易家としても名を馳せました。佐賀の武雄をルーツとする後藤貴明の一族で、諱は貞之、初めは惣太郎、後に庄左衛門と名乗りました。洗礼名はトメ（Thome）です。

1571年、宗印は長崎に移住し、町人たちのリーダーである頭人（とうにん）として活躍しました。1592年には、長崎代官の寺沢広高によって頭人が町年寄と改められましたが、宗印は引き続き町の統治に携わりました。

町年寄としての職務を全うする傍ら、宗印は朱印状を得てブルネイやシャムとの貿易も積極的に行いました。彼は2隻の朱印船を所有し、海外貿易で大きな利益を上げました。

また、宗印はキリスト教の信仰にも深く帰依していました。1600年からは、金属活字を用いた国字本でキリシタン信仰の手引書を出版し、『おらしょの飜訳』、『どちりな・きりしたん』、『ひですの経』などを刊行しました。その財力と社会的地位を活かしてイエズス会を支援し、「コンフラリア・デ・ミゼリコルディア（慈悲の信心会）」にも参加して慈善事業にも尽力しました。1621年には、長崎のキリスト教徒がローマ教皇に送った奉答文にも署名しています。

1626年、長崎の住民に棄教が命じられ、長崎奉行の水野守信によって棄教が進められましたが、宗印はこれを拒否し長崎を離れました。同じく町年寄であった町田宗賀ジョアンも信仰を捨てず、共に長崎を去りました。

1627年、宗印は80歳を超えて病没し、晧台寺に埋葬されました。彼の息子である後藤庄左衛門も出島で活躍した町人の一人として知られています。

後藤宗印は、長崎の発展に大きく貢献しただけでなく、自身の信仰を貫き通した人物として、その名は歴史に刻まれています。彼の生涯は、当時の長崎におけるキリスト教の隆盛と、それに伴う弾圧の歴史を物語る上で重要な意味を持っています。

参考文献

赤瀬浩著『「株式会社」長崎出島』 講談社選書メチエ
片桐一男著『出島 異文化交流の舞台』 集英社新書
五野井隆史著『日本キリスト教史』 吉川弘文館
外山幹夫著『長崎奉行 江戸幕府の耳と目』 中公新書
外山幹夫著『長崎 歴史の旅』 朝日新聞社
原田博二著『図説 長崎歴史散歩 大航海時代にひらかれた国際都市』 河出書房新社
『国史大辞典』第4巻 吉川弘文館
『国史大辞典』第5巻 吉川弘文館
『国史大辞典』第10巻 吉川弘文館
『長崎県大百科事典』 長崎新聞社
『長崎県の地名 日本歴史地名大系43』 平凡社
『長崎県の歴史』 山川出版社

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