徐皇后

徐皇后：明朝を支えた賢后

徐皇后（じょこうごう）は、明の第3代皇帝である永楽帝（朱棣）の皇后であり、その生涯は才知と勇気に満ちたものでした。彼女は政治的な洞察力、勇ましい行動力、そして文化的な貢献によって、明朝の歴史にその名を深く刻みました。

生い立ちと結婚

徐皇后は、明の建国に大きく貢献した元勲、魏国公・中山王の徐達（じょたつ）の長女として生まれました。弟には、靖難の変で建文帝側についた徐輝祖（じょきそ）がいます。
幼少の頃から読書を好み、その才能は「学者」とまで称されるほどでした。その評判を聞いた朱元璋（洪武帝）は、四男の朱棣（後の永楽帝）の正妻として徐氏を嫁がせることを望み、洪武9年（1376年）に二人は結婚しました。徐皇后は容姿こそ美しいとは言えませんでしたが、機知に富み、夫婦仲は非常に良好で、7人の子供をもうけました。また、朱元璋の皇后である馬氏にも特に寵愛されたと伝えられています。

靖難の変での活躍

建文元年（1399年）に靖難の変が勃発すると、徐皇后は夫である燕王朱棣の本拠地、北平（現在の北京）を守るという重要な役割を担いました。建文帝軍の将である李景隆（りけいりゅう）が北平に攻め込んできた際、城を守っていたのは朱能（しゅのう）とわずかな兵士のみでした。この危機的な状況下で、徐皇后は自ら出征中の兵士の妻たちを率いて鎧を身に着け、勇敢に戦いました。彼女の行動は、北平の防衛に大きく貢献したと言えるでしょう。

皇后として

建文4年（1402年）に靖難の変が終結し、朱棣が皇帝に即位すると、徐皇后は皇后となりました。皇后となった後も、彼女は慎み深く、決して驕ることはありませんでした。また、自らの親族を特別扱いすることも決してなく、公平で公正な姿勢を貫きました。
徐皇后は文化事業にも熱心に取り組み、古人の格言や善行をまとめた「内訓」や「高皇后聖訓」「勧善」などの著作を編纂しました。これらの著作は、後世の女性たちにとって模範とされました。特に「内訓」は、宮廷女性の教育に大きな影響を与え、道徳的な規範を形成する上で重要な役割を果たしました。

死去と追悼

永楽5年（1407年）7月、徐皇后は46歳でこの世を去りました。彼女の死を深く悲しんだ永楽帝は、チベットから僧侶を招き、盛大な葬儀を執り行いました。彼女の功績と人柄を讃え、諡号として「仁孝慈懿誠明荘献配天斉聖文皇后」が贈られました。

子女

徐皇后は、永楽帝との間に以下の7人の子供をもうけました。

朱玉英（永安公主）
朱高熾（洪熙帝）
朱高煦（漢王）
永平公主
朱高燧（趙王）
安成公主
咸寧公主

まとめ

徐皇后は、明朝の歴史において、その知性と勇気、そして文化への貢献により、特別な地位を確立しました。彼女は、内助の功を発揮し、夫を支え、そして後世に大きな影響を与えた賢后として、永遠に語り継がれるでしょう。

参考文献

『明史』（中華書局）
* 『明太宗実録』

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