御嶽 (沖縄)

御嶽（うたき）とは

御嶽（うたき）は、琉球神道における祭祀を行う神聖な場所であり、「腰当森（くさてぃむい）」や「拝み山」とも呼ばれます。琉球王国時代から信仰の中心として存在し、現在でも沖縄の精神文化において重要な役割を果たしています。

御嶽の概要

「御嶽」という名称は主に沖縄本島とその周辺の島々で使用されていますが、宮古地方では「すく」、八重山地方では「おん」や「うがん」など、地域によって様々な呼び名があります。御嶽は、琉球の神話に登場する神々が存在、あるいは来訪する場所であり、祖先神を祀る場でもあります。そのため、地域の祭祀においては中心的な施設として、地域を守護する聖域として現在も多くの人々の信仰を集めています。

琉球神道では、神に仕えるのは女性であるとされ、かつては男子禁制の場所でした。現在でも、多くの御嶽で男性の立ち入りが制限されています。

御嶽の形態

御嶽の形態は多様で、森の空間や泉、川などが御嶽となることもあれば、島そのものが御嶽として扱われることもあります。御嶽によっては、空間の中心に「イベ」あるいは「イビ石」と呼ばれる石碑が設置されていることがあります。これは神が降臨する際の標識であり、ご神体そのものではないとされていますが、ご神体として扱われている場所も少なくありません。

宮古や八重山地方では、過去に実在したノロ（神女）の墓を御嶽とし、そのノロを地域の守護神として祀ることが多く見られます。

大きな御嶽では、「神あしゃぎ（神あさぎ）」と呼ばれる前庭や建物が設けられていることがあります。この空間は、御嶽の神を歓待し、歌や踊りを奉納するために使用されます。

鳥居について

御嶽やグスクの入口に鳥居が設置されている光景は、沖縄県内でよく見られます。しかし、近世琉球までの御嶽には鳥居は存在しなかったと考えられています。これは、明治維新後の「皇民化政策」により、御嶽やグスクが神社として再編された結果であるとされています。しかし、一部の地域では、日本領有後に設置された鳥居がそのまま残っている場所もあります。

鳥居は必ずしも本土神道式の神社を象徴するものではなく、奄美・琉球における神社は、御嶽のような形態で、小屋や祠、石などが置かれているだけの場所も多く存在します。これらの場所は、古来の聖地として、現在も大切にされています。

御嶽の起源

御嶽は、古代社会において集落があった場所に起源を持つという説が有力です。御嶽の近くから遺骨が発見される例が多いことは、祖先崇拝との関連を示唆しています。また、川や泉が御嶽として扱われるのは、琉球石灰岩からなる沖縄の土地柄から、水源が古代社会において神聖視されていたためと考えられます。

グスク（城）に拝所が存在することから、グスクは元々御嶽を中心とした集落が発展し、城塞化したとする説もあります。首里城や玉城城など、城そのものが御嶽とみなされていた例も存在します。

現代における御嶽

現代でも、琉球の信仰は地域に根付いており、御嶽はその中心的な場所として、地域住民によって大切に保護されています。斎場御嶽や園比屋武御嶽のように観光資源化されている場所もありますが、多くは地域の人々やノロによって維持されています。御嶽は、地域の祭事の中心となるだけでなく、東御廻りや今帰仁上りなどの巡礼地としても崇められています。

しかし、米軍による土地接収や、発掘調査、開発などにより、立ち入りが制限されたり、破壊された御嶽も存在します。首里城敷地内にあった十御嶽の一部は、首里城再建の際に立ち入りが制限されたり、埋め立てられたりしました。

主な御嶽

琉球開闢九御嶽、東御廻りの御嶽、今帰仁上りの御嶽、先島諸島の御嶽などがあります。

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