御木本幸吉

御木本幸吉：真珠養殖のパイオニア、その生涯と偉業

御木本幸吉（1858年3月10日 - 1954年9月21日）は、日本の実業家であり、真珠の養殖とそのブランド化に成功し、「真珠王」の名を世界に轟かせました。彼が創業した御木本真珠店（現在のミキモト）は、日本を代表する宝飾ブランドとして、今もその輝きを放っています。

生い立ちと初期の事業

御木本幸吉は、現在の三重県鳥羽市で、代々うどん製造・販売を営む家の長男として生まれました。幼少の頃から商才を発揮し、14歳で家業を手伝う傍ら、青物の行商を始めました。明治維新後、米穀商に転身し、東京・横浜への旅行をきっかけに、海産物が中国向けの有力な貿易商品になることを見抜き、海産物商へと再転身しました。アワビ、天然真珠、ナマコなど様々な商品を扱い、地元産業の振興に尽力しました。

真珠養殖への挑戦

当時、天然真珠は高価であり、アコヤ貝の乱獲により資源が枯渇する危機に瀕していました。幸吉は、この状況を憂慮し、真珠の養殖に着目します。1888年、大日本水産会の柳楢悦に指導を仰ぎ、真珠養殖の可能性を探りました。東京帝国大学の箕作佳吉、岸上鎌吉らの協力を得て、科学的な裏付けを得ながら、試行錯誤を重ねました。

外国での養殖例を参考に、アコヤ貝に異物を挿入する方法を研究し、1890年には神明浦と相島（現在のミキモト真珠島）で養殖実験を開始しました。地元漁業者との交渉や赤潮による貝の絶滅など、数々の困難を乗り越え、1893年7月11日、ついに半円真珠の付着したアコヤ貝を発見しました。

特許取得と事業の拡大

1896年1月27日、半円真珠の特許を取得し、真珠養殖事業の第一歩を踏み出しました。妻・うめの死を乗り越え、親族の協力を得ながら、事業を拡大しました。1899年には東京に御木本真珠店を開設し、1913年にはロンドン支店を開設するなど、海外にも進出しました。1916年には真珠素質被着法の特許を取得し、真円真珠の養殖にも成功しました。

真珠裁判と品質へのこだわり

1921年、ヨーロッパの宝石商から養殖真珠が「ニセモノ」であると訴えられ、訴訟に発展しました。幸吉は、オックスフォード大学やボルドー大学の権威者を証人として立て、養殖真珠の正当性を主張しました。1924年、パリの裁判所は、天然真珠と養殖真珠に違いはないとの判決を下し、御木本側が全面勝訴しました。この裁判を機に、養殖真珠は世界的に認められる宝石となりました。

幸吉は、品質にも徹底的にこだわり、1932年には日本産の粗悪真珠を燃やして見せることで、ミキモト真珠の品質をアピールしました。

晩年と遺産

第二次世界大戦後、幸吉は占領軍将校らを養殖場に招き、真珠輸出による外貨獲得に貢献しました。1949年には、真珠養殖事業による国際親善に対して中日文化賞を受賞しました。1954年9月21日、老衰のため96歳で死去しました。葬儀は、幸吉自身が出資・助言して建設された鳥羽小学校校舎で行われました。

御木本幸吉の遺産は、ミキモトのブランドとして、今も世界中の人々を魅了し続けています。また、彼の革新的な発想と不屈の精神は、日本の産業史に大きな足跡を残しました。

人々の協力

妻の死後も小川小太郎、河原田俊蔵、川村又助、藤田四郎など、多くの人々が幸吉を応援しました。発明王エジソンとの会見では、真珠養殖を驚嘆すべき発明と讃えられました。

貴族院議員としての活動

1924年（大正13年）には三重県多額納税者として貴族院議員に互選され、公正会に所属して1期在任しました。

真珠の世紀へ

御木本幸吉の真珠養殖の成功は、クウェートなどの中東諸国の経済に大きな影響を与え、石油開発を後押しする一因となりました。彼の功績は、真珠を宝石市場の中心に位置づけ、20世紀を「真珠の世紀」へと導いたと言えるでしょう。

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