徳川實枝子

徳川實枝子（とくがわ みえこ）

徳川實枝子（1891年2月14日 - 1933年4月25日）は、明治時代から昭和時代初期にかけて生きた日本の皇族・華族です。有栖川宮威仁親王と同妃慰子の次女として生まれました。旧名は實枝子女王。「実枝子」と表記されることもあります。

生い立ち

1891年（明治24年）2月14日午前2時30分、有栖川宮威仁親王と同妃慰子の第2女子として誕生。實枝子女王と命名されました。

1904年（明治37年）5月13日、徳川慶喜公爵の嫡男である徳川慶久との婚約が内定します。この縁談は、伯父にあたる有栖川宮熾仁親王の勧めと、慶喜公の賛同によりまとまりました。慶喜の母・吉子女王は有栖川宮織仁親王の娘であり、實枝子の父・威仁親王も織仁親王の曾孫であったため、慶久とは共通の祖先を持つ遠縁の関係でした。

学習院を退学後、宮邸で教育を受けました。特に和歌に秀でており、高崎正風に師事。書道は母の慰子妃から有栖川流を伝授され、週に3、4時間は練習に励みました。

1908年（明治41年）10月13日に縁組が勅許され、10月27日に納采の儀を経て、11月8日に徳川慶久に降嫁しました。結婚に先立つ同年4月には、兄の栽仁王が20歳で早世し、有栖川宮家の直系は實枝子女王ただ一人となっていました。

降嫁後

1908年（明治41年）12月、久能山東照宮での御廟臨時祭に参列した後、修善寺に立ち寄って新婚旅行を過ごしました。實枝子の容姿は美しく、慶久の友人である杉村陽太郎は「慶久のやつ、うまくやったな」と評したと伝えられています。

慶久との間には、慶子（夭折）、喜久子、慶光、久美子の4人の子供をもうけました。

1913年（大正2年）7月5日に父・威仁親王が薨去。大正天皇の第三皇子である光宮宣仁親王が、實枝子の次女・喜久子（1911年〈明治44年〉生）と結婚し、有栖川宮家の祭祀を継承することになりました。

貞明皇后とは旧知の間柄であり、度々御所に呼ばれては話し相手やお稽古の相手を務めたと言われています。

1922年（大正11年）に夫の慶久が急死（病死とも自殺とも言われています）。

1930年（昭和5年）2月4日、喜久子が高松宮宣仁親王と婚姻しました。

1933年（昭和8年）、結腸癌を患い東京帝国大学医学部附属医院に入院。佐世保からの帰途にあった喜久子妃にも電報で知らされました。實枝子は食事を摂取できず、吐血している状態でしたが、急行した喜久子妃に「貴女は宮家へ嫁がれた方」とすぐに帰るよう促しました。すでに末期の状態であり開腹手術も受けましたが、實枝子自身は回復すると信じており、喜久子は真実を告げたり遺言を聞きだすことができませんでした。

同年4月25日に逝去。喜久子は臨終に立ち会った外科の塩田広重博士や、内科の稲田龍吉博士に礼を述べました。当時数え年23歳だった喜久子は實枝子の死の経験から、後年高松宮妃癌研究基金を創設しました。なお、宣仁親王と喜久子夫妻に子は無く、有栖川宮家の祭祀は絶えましたが、有栖川流書道は常陸宮妃華子や秋篠宮文仁親王に伝授されています。

参考文献

中村秋人『名媛と筆蹟』博文館、1909年12月。
威仁親王行実編纂会『威仁親王行実』 上、威仁親王行実編纂会、1926年。
威仁親王行実編纂会『威仁親王行実』 下、威仁親王行実編纂会、1926年。
高松宮妃喜久子『菊と葵のものがたり』中央公論社、1998年11月。
高松宮妃喜久子『菊と葵のものがたり』中央公論社〈中公文庫〉、2002年1月。

関連項目

近衛文麿 - 母方のいとこ同士

外部リンク

* 『明治・大正・昭和歴史資料全集　皇室篇より「有栖川宮實枝子女王　徳川喜久氏に降嫁」』 - 国立国会図書館デジタルコレクション

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